研究課題
本研究はミャンマーのポスト軍政期における変化の様相のなかで、宗教的背景を持つローカルNGOの活動に着目し、現地調査を通じて、その実態を実証的に明らかにすることを目指してきた。研究はおおむね順調に進んできたが、2020年度コロナ感染症の広がりによって、調査を一部中止・延期することとなった。ただ、具体的な研究活動は続け、2020年度にはオンライン研究会を10回、2021年度には5回、2022年度には3回に加えて対面研究会を1回開催した。研究会を通じて、関連文献の読解や各自の調査データの発表議論といった活動をつづけた。一方、2021年2月1日にミャンマーで軍事クーデターが生じ、研究の方向性を再考する必要に迫られた。福祉事業を行ってきた著名な協会(ローカルNGO)の多くが軍政権側から活動を制限され、主催者が逮捕されるといった状況も見られ、最終年度とはいえ、これまで蓄積した調査研究の方向性を見極める必要が生じた。そのため以下の2点から新たに情報を得ることとした。(1)SNSなどを通じてミャンマーの現地状況を把握する。(2)海外のミャンマー人コミュニティの調査を行い、宗教NGO、あるいは福祉事業を行う協会の動向を把握し、国内との連携状況をとらえる。こうした新たな状況への対応を含め、これまで得られた研究成果としては、こうした福祉事業の組織活動が民主主義の広がりと深くかかわり、社会変革に向かう運動論としても理解できること、また、従来人類学研究内で指摘されてきた伝統的「功徳」理解に変化をもたらしていることなどが明らかになった。加えて、福祉事業を通じての寄付を贈与論、モノ研究などから再考し、福祉事業とその組織化という現象の理解に新たな視点を与えることとなった。具体的成果としては、ヤンゴン大学で開催した国際セミナーの成果を英文で発行した。今後日本語での書籍刊行を予定している。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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文化人類学
巻: 85(4) ページ: 659-671
巻: 85(4) ページ: 730-749