研究課題/領域番号 |
17H04543
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
明石 純一 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (30400617)
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研究分担者 |
安里 和晃 京都大学, 文学研究科, 特定准教授 (00465957)
首藤 もと子 筑波大学, 人文社会系, 教授 (10154337)
ダダバエフ ティムール 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (10376626)
小川 玲子 千葉大学, 大学院社会科学研究院, 准教授 (30432884)
遅野井 茂雄 筑波大学, 人文社会系, 教授 (60257441)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | リージョナルガバナンス |
研究実績の概要 |
本研究は、人の国際移動をめぐるリージョナルガバナンスの背景、過程、帰結を、国際比較により明らかにすることを、その内容としている。具体的に検証するのは、これまで学術的な考察が十分に及ぶことがなかった送出国間の地域的連携と、国際組織や市民社会組織といった非国家主体が行使する影響である。比較対象としては、中央アジア、南アジア、東南アジア、中南米という、多数の送出国を擁する地域を選んでいる。送出国政府の関与や、今や膨大な数に達する非国家主体の働きかけに着目する本研究は、欧米の主要受入国による移民管理・規制に目を向けてきた従来の「ガバナンス観」に視座の転換を促し、政治学・国際関係論の比較ガバナンス研究に新しい境地を切り開く。 初年度の活動としては、全体会合、予備調査、研究推進のための基盤としてウェブサイトの構築を行った。全体会合については、本研究が移民政策研究、地域研究、ガバナンス研究などの諸領域を横断していること、4つの地域をまたがっているという性質を鑑み、基本的な研究の枠組みや分析概念および調査の方向性の共有を進め、研究チーム内の意思疎通に努めた。予備調査については、調査対象地域のうち、主に東南アジアと中央アジアにおいて実施された。付随して、本科研に関連する成果が生まれている。ウェブサイトには、上記の全体会合における会議録を共有する機能を付したほか、文献資料をアーカイブ化するヴァーチャルな場所を設けた。また、研究調査の進捗や研究成果を報告できる場についての情報を広く提供している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
夏に研究メンバーの過半数が勤める筑波大学にて全体会合を実施したことにより、今後の研究の方向性と用いる分析概念の共有がはかられた。また、本科研専用のウェブサイトを立ち上げたことにより、以降は、研究資料のアーカイブ化を容易に進めることができる。本ウェブサイトは、研究を遂行するためのプラットフォームであり、研究の進捗や課題を共有できる体制が技術的に整ったといえる。 さらに、海外現地調査(予備調査)が数度行われ、現地研究者との連携の確認が計画通りなされている。この点は特に、本科研における四つの調査対象のうち、東南アジアと中央アジアに当てはまる。同地域では研究代表者と研究分担者が複数回に渡り調査を行ったほか、学術研究のセッションや国際会議(ジャカルタ、マランガ、ホーチミン、ハノイ、バンコク、シンガポール、マニラ、台北、タシュケント、リヨン、ミラノ、パドバ)での報告機会に恵まれた。上のすべての報告が本科研のみにすべて依拠した発表というわけではないが、本科研に関わりを持つ現地研究者との意思疎通がなされ、本科研が当初から目指していた国際共同研究体制の強化につながった。 そのなかでも、本科研初年度の後半(2018年1月~3月)を中心に、研究代表者と研究分担者より複数の中間的な成果が公開されている。その主たるものは、これまで個々に進めてきた研究とも密接に結びついているが、本科研メンバーの明石純一、首藤もと子、小川玲子はそれぞれ共編著、安里和晃は単編著、ダダバエフは分担著の刊行をしており、今後研究をさらに推進されるうえで弾みになるものと判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、初年度に実施した文献サーベイ(関連図書、論文、報告書等の収集)の結果を整理し、人の国際移動をめぐるガバナンスを中心概念とする情報のアーカイブ化を進める。日本語と英語以外の文献については、担当者が必要箇所を中心に翻訳・要約を行っており、全体的な資料の整理、分類を進める。 上記に加えて、二年目以降には、現地調査を実施する。中央アジア、南アジア、東南アジア、中南米の四つの調査地域ごとに、1週間~10日間程度の現地調査を行う。人の国際移動のガバナンスの構築、運用過程に関与する主要国の政府・行政機関、国際機関、移民・難民支援NGO、宗教組織、労働組合等より資料提供を受けるとともに、ヒアリング調査を進める。政策・施策、予算、分野別事業やスキーム、予算規模やリソース配分、人員等から、人の国際移動をめぐるガバナンスの具体像を描き始める。背景にある規範や地域的取組みの成果を探る。この現地調査では、四つの地域におけるリージョナルガバナンス、特に、地域協議プロセスの構造と実態を明らかにする。すなわち、中央アジアにおける「アルマトイプロセス」、南アジアにおける「コロンボプロセス」、東南アジアにおける「バリプロセス」、中南米における「プエブラプロセス」や「移民に関する南アメリカ会議(リマプロセス)」のほか、国際労働移動に関する昨今の地域主導の動向(2017~2018年に進展した移民に関するASEAN合意の背景や過程など)を明らかにする。 上記の調査を経て得られた知見は、年度内に、公開の研究会において中間発表を行い、国際政治・国際関係分野の研究者、移民研究者、地域研究者から、広くフィードバックを得る。つまり、資料のアーカイブ化、現地調査、研究会の開催を主要な活動し、次年度(3年目)の地域ワークショップ開催と成果公開に速みやかにつなげる。最終年度の活動(国際会議と図書の刊行)も企画する。
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