研究課題/領域番号 |
17H04544
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
福富 満久 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (90636557)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | NATO / 軍事介入 / 国際政治 / 人道的介入 / 国際正義 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、米国を含む北大西洋条約機構(NATO)加盟国が冷戦後の国際政治において紛争をどのように解決しようとしてきたのか、その背景にはどのような思想があり、論理があり、そして介入に際し現実はどうなったのか、についてこれまでNATO加盟国の中で人道的介入に積極的な役割を果たしてきた英国、フランス、米国を中心に明らかにすることである。 2019年度の本研究の実績として「基礎からわかる米国の中東関与 4ステップ」『エコノミスト』毎日新聞出版株式会社、2020.2.18、「経済教室 米イラン対立の行方 無秩序地域拡大、米の重荷に」『日本経済新聞』、日本経済新聞社、2020.1.16朝刊、「トランプの危険なイラン挑発 中東で米露の代理戦争リスク」『エコノミスト』、毎日新聞出版株式会社、2019.6.4などが挙げられる。 中東で不安定な情勢が続くのは、西欧列強による植民地支配がその後の政治・経済・社会に多大な影響を及ぼしているからである。米国はイラン・イラク戦争でイラク側に加担し武器輸出などを行った。イスラム革命後のイランを敵視したためである。このような歴史が、中東情勢を一層不安定にしていることを上記の業績では明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度および30年度の研究成果を深めるため、英国ロンドンに所在するキングスカレッジロンドンのシニア・リサーチ・フェローとして、2019年8月1日からロンドンに滞在して研究を行ってきた。また、英国王立戦略研究所の会員として同研究所資料室にて「保護する責任」によって初めて介入したリビア内戦とシリア問題について最新の理論・分析を追いながら研究を進めてきた。安保理決議1973では、危機に瀕している人命を保護するためにあらゆる必要な手段を取ることができるとする一方、第一に停戦を求めること、主権を保持すること、独立性と領土保全を確保することとされている。これまでのNATOの地域の安全保障機構がどのように近隣地域への武力行使をする実行主体となることができたのかについて研究を進めることができた。こうした理由から現在までの研究はおおむね順調に進展したと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
NATOは、第二次世界大戦が終わり、東欧を影響圏に置いた共産主義のソビエト連邦との冷戦が激しさを増す中で、イギリスやフランスが主体となり、1949年4月4日締結の北大西洋条約により誕生した。結成当初は、ソ連を中心とする共産圏(東側諸国)に対抗するための西側陣営の多国間軍事同盟であり、「アメリカを引き込み、ロシアを締め出し、ドイツを抑え込む」(=反共主義と封じ込め)というヘイスティングス・イスメイ初代事務総長の言葉が象徴するように、ヨーロッパ諸国を長年にわたって悩ませたドイツの問題に対するひとつの回答でもあった。冷戦終結後は、1991年に「新戦略概念」を策定し、脅威対象として周辺地域における紛争を挙げ、域外地域における紛争予防および危機管理(非5条任務)に重点を移した。実際NATOはイラクやリビアに軍事介入を実行した。こうした行動を踏まえて、NATOがどのように変貌を遂げたのか、全貌を明らかにする。 介入するための出口戦略も提言する。地域機構が介入に有効かどうか分析し、アラブ連盟や西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)など紛争が多い地域での平和構築に役立つ視座を提供する。 また、軍事介入を行った結果、イラクやリビアなど介入された側の社会がどのような問題を抱え込むことになったのかを調査・研究する。
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