研究課題
研究の目的は倫理的消費という国際的な運動の背景に存在する法則性を明らかにすることにあった。そのために、消費地と生産国の両側での法則性を検討しすることを重要視していた。しかし、本年度はコロナウイルス渦の影響下で、海外渡航ができず、研究計画の大幅な修正を余儀なくされた。複数国間でデータベース構築を目的とした調査は、日本のみでの実施となったが、過去の同種の調査票と同一の質問項目を設定したため、過年度との比較が可能となり、日本での倫理的消費運動の限界を確認することができた。海外現地調査を国内調査や文献ベースの調査に切り替える工夫を行い、研究を実施した。倫理的消費の拡がりは、欧州や米国だけではなく、日本、台湾、韓国などの東アジアの国々でも着実に進んでいることが確認することができた。そして、その拡がり方は各国毎に多様な方向性を持つことが明らかになった。グローバルな運動として始まった倫理的消費運動が現地化のプロセスを進める中で、現地の政治経済的体制との接合が求められることが明らかになった。これはグローバルな社会運動の可能性と限界を示したという点で、学術的に大きな意義を持っていると言えよう。これまでの倫理的消費運動と社会運動は、グローバルな正義を伝播するプロセスとして前向きに捉えられる傾向があった。しかし、受け入れ先では、現地の政治経済体制の制約のもとで、成果を上げるための戦略が取られている。そうした戦略はしばしばグローバルな運動と矛盾する内容を内包する可能性があること、そしてその流れを現地の消費社会が前向きに受容することを本年度の研究で指摘した。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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問題と研究 : アジア太平洋研究専門誌
巻: 50 (4) ページ: 69-97
立命館経済学
巻: 68(4) ページ: 19-39
10.34382/00012869