本研究は、海外と日本の大学の研究マネジメントの情報を収集し、比較分析を行う。近年、日本においても大学からのイノベーション創出を目指して、リサーチ・アドミニストレーター(URA)の整備など大学の研究マネジメントの支援が行われているが、先進諸国の代表的な研究大学と比べれば、日本の研究大学の研究マネジメント体制は未だ十分とは言えない。そのため、海外と日本の大学の研究マネジメントの比較分析を行い、日本の大学の現状と課題を分析し、課題解決のための方向性を提示することが本研究の目的である。具体的な海外のフィールド調査先として、米国はスタンフォード大学、欧州は、南デンマーク大学、ケント大学の他、ノルウェーRMA協会といった研究支援人材の協会を選定し、調査を行った。その結果、欧米の大学においては、前述のURAの人材の整備が進められており、その専門性やモチベーションを高めるための努力が積極的に行われていることが分かった。米国の研究大学における研究支援のマネジメントの体制については既存文献でも多くの報告があるが、欧州においても同様の動きがあることは興味深い点である。また、特に欧州においては、専門職としてのキャリア支援と社会的認知を広めるための専門的な協会が設立されており、情報交換のみならず専門性を高めるための積極的な活動を展開していることも確認された。さらに、これらの研究支援人材の整備においては研究大学のトップの強いリーダーシップが発揮された積極的なマネジメントの存在が示唆された。日本の大学においても研究支援体制の整備が進められているものの、本研究の事例調査においては、未だ専門性の高い人材の採用が十分ではなく、研究マネジメントの充実が一層求められることが今後の課題であることが分かった。
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