研究課題/領域番号 |
17H04560
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
青木 聡子 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (80431485)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | エネルギー転換 / 地域社会 / 環境社会学 / 社会史 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、エネルギー転換にともない主力産業を失った/失いつつある地域社会の「その後」を検証することで、ドイツにおけるエネルギー転換の社会的受容をローカルレベルに焦点を絞って明らかにすることを目的とする。2018年度は原発立地地域に加えて産炭地域も対象とし、ドイツ国内の2地域について調査研究をおこなった。 (1)一つは、前年度に引き続き、原発立地自治体ビブリスである。「原発の町」からの生まれ変わりが図られているビブリス町内の各主体(ビブリス町長、原発事業者RWE広報担当者、住民)に聞き取り調査をおこなうとともに、質問紙調査の実施に向けて町長及び町役場の担当者と交渉をおこなった。聞き取り調査からは、①町が進める企業誘致と宅地整備のうち、宅地整備については進捗が遅れ気味であること、②近郊都市(フランクフルトなど)との交通アクセス網の整備が進んでおり、ベッドタウン化に向けて条件が整いつつあること、③②について住民は町長を評価しているものの、①については不満を有していることが分かった。質問紙調査の実施については、町役場担当者の都合により、次年度に持ち越されることになった。 (2)もう一つは旧東ドイツの産炭地域ラウジッツである。当該地域は、複数の自治体からなる、ドイツの主要な褐炭産出地域である。脱炭素政策を受け褐炭産業も斜陽化しており、原発立地地域に並んでエネルギー転換の影響を大きく受ける地域である。2018年度は、当該地域の褐炭採掘現場の観察をおこなったほか、中心的な自治体であるシュプレンベルクの市長に聞き取り調査をおこなった。聞き取り調査からは、褐炭産業終了後の地域社会の構想として同市が情報産業の誘致を考えていることや、同市長の石炭委員会での活動についてデータを得ることができた。 これらの調査の分析結果は、今後、日本社会学会や環境社会学会や日本ドイツ学会などで報告予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
複数の調査対象地域のうち、本年度は2地域で調査をおこない、データを収集した。①聞き取り調査を中心とした定性的調査、特に住民のライフヒストリー調査が進んでいること、②各自治体の財政および雇用状況に関する統計資料の入手と分析も当初の予定通りできていることから、「(2)おおむね順調に進展している」と評価する。その一方で、質問紙調査の実施については、進捗がやや遅れている。次年度、役場担当者らとの交渉を進め、質問紙調査を進めていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、①質問紙調査の実施と分析、②今年度おこなった聞き取り調査結果の分析に加え、③ビブリスにおける祭礼への参与観察を予定している(2019年度)。脱原発後の地域社会の変化、とりわけ住民の生活の変化について、①によって定量的に把握するほか、③によって定性的にも検証をおこなう。具体的には、50年以上にわたってビブリスで毎年開催されてきたGurkenfest(グルケンフェスト、きゅうり祭り)の参与観察をおこない、脱原発後の祭礼の変化について調査したい。 加えて、今年度に引き続き、プレ原発期、原発期、脱原発期がいかに経験されてきたのかについてのライフヒストリー調査を中心とした定性的調査も重点的におこなう予定である。
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