本研究課題は、エネルギー転換にともない主力産業を失った/失いつつある地域社会の「その後」を検証することで、ドイツにおけるエネルギー転換の社会的受容をローカルレベルに焦点を絞って明らかにすることを目的とする。2019年度はドイツ国内の原発立地地域について調査研究をおこなった。 具体的には、原発立地自治体ビブリスにおける参与観察および聞き取り調査である。原発建設以前のビブリスの主要産業であったピクルス生産の歴史を反映した町のイベント「きゅうり祭り(Gurkenfest)」(毎年6月開催)に参加し、「原発の町」からの生まれ変わりが、地域の祭りにいかに表出されているのかを調査した。その結果、電力会社から支援金が依然として寄せられているものの、そのことを大々的に示す横断幕がなくなっているなど、以前との変化が見られた。住民からも、電力会社から距離を置いた語りが得られた。 加えて、質問紙調査の実施に向けて町長及び町役場の担当者と交渉をおこなったが、新型コロナウイルス感染症の影響により、次年度以降に持ち越されることになった。
|