本研究の目的は、『紛争が紛争国の住民に長期に渡って与える影響を心身両面から明確化し、有効な対応策を見いだし、今後紛争が生じないようにするための予防策を見いだす』ことである。本年度の目的の1つは、長期に渡る戦乱・紛争時に受けた反復性のTraumaの様相を明らかにすることである。目的2は、現在の国民の健康面、心理面を中心とした現状を把握し、過去に受けたTraumaの様相と最近頻発している種々の問題との関連を分析検討することである。目的3は、戦乱によるtraumaを抱えている人々への支援ができるよう、支援者養成プログラムを検討し実施することである。 対象国は、東ティモール民主共和国である。2023年度は、主に支援者養成プログラムを企画・実施しその効果を検討した。支援者養成のためのワークショップを4回実施した。現地で何らかの形で支援活動を実施している参加者(26名)は1回目から4回目のワークショップに参加した。1回目は、参加者が支援を行っている現状を明確にし、支援者として必要な学習内容を確認した。2回目は、相談を受けることについて学び、演習を行った。3回目では、愛着について学び、支援者自身が自分の愛着状況に気づくことの重要性を学習した。4回目では、今関わっている住民の状況を整理し、具体的な対応のあり方の演習を実施した。4回のワークショップを通して、支援に必要な知識とスキルの不足を補うことができたと思われる。 しかし、相談活動を実施する上で基本となる心理学の知識の定着が不十分であること、これまで見られなかった種々の精神的な問題が生じ、それに対応するプログラムを開発する必要があると思われた。そのため、過酷な状況下にあり、十分な学習環境が得られなかった発展途上国に適した「支援者養成プログラム」を検討することが課題であることが明確になった。
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