研究実績の概要 |
本研究は、スペイン・テイデ観測所の口径1.5m望遠鏡に設置した4色同時撮像装置「MuSCAT2」を用いて、(1)太陽系外惑星探索衛星「TESS」で発見される惑星候補に対して大規模検証観測を実施し、効率的に本物の惑星を識別するとともに、(2)低温小型惑星の大気を系統的に調査し、主星から受ける紫外線の照射強度とヘイズの生成量との関係を明らかにすることを目指すものである。 TESSは2018年4月に打ち上げられ、同年7月より科学観測を開始、同年9月に惑星候補天体リストの順次公開が始まった。しかし、TESSは最初の1年間は黄道座標における南天のみの観測を行なったため、北半球に位置するMuSCAT2で観測出来る天体は限られていた。そのため、観測可能なTESSの惑星候補天体が無い期間には、2017年度に引き続き、Kepler衛星の第二期探索や地上のトランジット探索などで発見された惑星候補の検証観測および既知の惑星の大気観測などを実施した。 また、日本国内からも遠隔操作でMuSCAT2を用いた観測が実施出来るように、遠隔観測システムの整備を行なった。さらに、観測データを即座に解析出来るように解析パイプラインの整備も行なった。 前年度に完成し運用を開始したMuSCAT2について、本年度に装置の概要および性能評価を記載した論文を査読付き論文誌に投稿、掲載された(Narita, Fukui et al. 2019, JATIS, 5, 015001)。さらに、トランジット惑星に関連する研究成果についての査読論文を計7本出版した。 一方、2018年10月にMuSCAT2に取り付けられた4つの検出器(冷却CCDカメラ)のうち1台が故障し、フルスペックでの観測が約10ヶ月間に渡り出来なくなった。そのため、研究費の一部を翌年に繰り越して、2019年度に予定していたフルスペックでの観測を実施した。
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