研究課題/領域番号 |
17H04577
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
田部井 隆雄 高知大学, 教育研究部自然科学系理学部門, 教授 (40207220)
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研究分担者 |
木股 文昭 公益財団法人地震予知総合研究振興会, その他部局等, 副首席主任研究員 (10089849)
伊藤 武男 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (40377982)
大久保 慎人 高知大学, 教育研究部自然科学系理学部門, 准教授 (50462940)
堤 浩之 同志社大学, 理工学部, 教授 (60284428)
松多 信尚 岡山大学, 教育学研究科, 教授 (40578697)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | スマトラ断層 / 地殻変動 / GPS / 変動地形 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,インドネシア国スマトラ島北西端アチェ州においてGPS観測と変動地形調査を実施し,内陸のスマトラ断層の過去の活動履歴,現在の固着/すべり分布,2004年スマトラ島沖巨大地震の発生によって引き起こされた地震活動度の変化などを解明することである.本研究グループは2005年以降継続してスマトラ断層を対象とした研究を実施しており,今回からは,都市部により近接しながら活動度が不明確ないくつかのセグメントおよび分岐断層を研究対象とした. 地殻変動/地震グループ5名は2017年8月に約2週間渡航し,バンダアチェ市に近いSeulimeumセグメントを対象に,計22点から成るGPS稠密観測網を整備した.多くの観測点でアンテナ固定用のボルトを埋め込み,観測の効率化と設置誤差の低減を図った.全点で2-3日間の初期観測を行うとともに,我々自身の先行研究によって設置したGPS連続観測点3点の保守整備を行なった.観測に使用した10組のGPS観測機材を日本から持参した. 変動地形グループは2017年9月に11日間渡航し,バンダアチェ市北方のWeh島におけるスマトラ断層の変位地形と露頭の調査,スマトラ断層から南東へ分岐したBatee断層の予備調査,対象地域内で2016年12月に発生したM6.5地震によって生じた亀裂の調査などを行なった. 現地においてはバンダアチェ市シアクアラ大学スタッフの全面的な協力を得て,日本側との共同作業という形で調査観測を実施した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ初年度当初の計画通り,スマトラ断層Seulimeumセグメントを対象としたGPS稠密観測網を整備できた.変動地形調査においても,対象をSeulimeumセグメント両端延長部へ拡張する計画に沿って,予備調査を実施できた. 本研究グループによる同じ対象領域内のGPS観測成果を用いた2012年インド洋地震に伴う粘性緩和過程に関する研究成果が,Journal of Asian Earth Sciencesに掲載された(2017年7月). 地震活動解析に関しては,2013年に観測網内で連続して発生した2つのM6.1地震の再解析を進め,結果をBulletine of the Seismological Society of Americaに投稿した.(2018年4月18日受理)
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今後の研究の推進方策 |
GPS観測網は稠密であるものの観測は年1回程度と頻度が低く,データの蓄積量は多くない.オリジナルな観測データの使用だけでなく,既存のGPSデータの活用や,地震活動など他の地球物理観測データの併用などを積極的に進め,スマトラ断層の固着/すべり分布推定を進めたい. 高解像度衛星画像解析による地形判読はSeulimeumセグメント以外まだ成されていないので,他のセグメントや分岐断層を対象に,衛星画像の活用を推進する.また,以前に行なっていた断層クリープの直接測定を再開する.さらに,断層地形を精査したうえでトレンチ調査を実施し,活動履歴の解明に努める. 最終的には,異なる時間スケールでの調査観測成果を統合し,スマトラ断層の地震発生危険度評価を行いたい.
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