研究課題/領域番号 |
17H04580
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
渋谷 岳造 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 深海・地殻内生物圏研究分野, 主任研究員 (00512906)
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研究分担者 |
牛久保 孝行 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 高知コア研究所, 技術研究員 (10722837)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 地質学 / 地球化学 / 地球史 / 酸素同位体比 / 海水 |
研究実績の概要 |
1950年代以来、初期地球の海水酸素同位体比は現在と同じだったのか、それとも現在よりはるかに低かったのか、という地質学・地球化学上の大きな論争が続いている。これにより、太古代の堆積岩(またはその中の鉱物)の酸素同位体比を用いて古海水温を復元しても、0℃から80℃まで誤差が生じてしまうという現状である。そこで、本研究課題では、熱水性石英とその中に保存されている流体包有物を用いた新たな方法論を提案し、太古代の海水酸素同位体比を定量的に復元することを目的としている。 平成30年度は、前年度までに採取した熱水性石英試料のSIMS分析を行った。その結果、米国グアム島のウマタック村沿岸部で採取した試料の酸素・ケイ素同位体比と流体包有物の均質化温度のバリエーションは岩石と反応した低温熱水と海水の混合で説明することができることがわかった。このことは、熱水性石英試料の酸素・ケイ素同位体比と流体包有物の均質化温度から熱水性石英形成時の海水酸素同位体比を復元することが可能であることを示している。論文投稿のためには追加分析が必要ではあるものの、本研究課題の一つ目の目的である「研究手法の確立」の目処がたったといえる。さらに、24億年前の試料のSIMS分析も行った結果、熱水性石英の酸素・ケイ素同位体比及び流体包有物の均質化温度のバリエーションは、現在の海水酸素同位体比でよく説明できることがわかった。また、西オーストラリア・ピルバラ地塊にて、マーブルバー地域及びビーズリーリバー地域の地質調査を行い、約200個の熱水性石英試料を採取した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は採取した新生代の熱水性石英試料中の流体包有物のサイズが予想より小さく、均質化温度測定に多くの時間を費やすことになり、平成30年度以降に予定していた先カンブリア時代の熱水性石英資料のSIMS分析準備を進めたが、平成30年度は当初予定していた「研究手法の確立」をほぼ達成し、先カンブリア時代の試料のSIMS分析を開始することもできた。また、先カンブリア時代の地質体の地質調査・試料採取も順調に行うことができた。したがって、平成30年度までの研究計画は予定通り進めることができており、全体の進捗状況は「おおむね順調」とした。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度は、平成30年度までに行った新生代及び原生代の熱水生石英試料のSIMS分析結果を詳細に解析し、追加分析を行う。これにより、熱水生石英の酸素・ケイ素同位体比と流体包有物の均質化温度から海水酸素同位体比を復元するという本研究手法を確立する。また、平成30年度同様、西オーストラリア・ピルバラ地域で地質調査・試料採取を行い、採取された試料の両面研磨薄片の作成、流体包有物の均質化温度測定、石英のSIMS分析を行う。これにより、太古代の海水酸素同位体比を復元し、これまでの成果も合わせて太古代から現在までの海水酸素同位体比変動を明らかにする。
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