研究課題/領域番号 |
17H04582
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高橋 嘉夫 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (10304396)
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研究分担者 |
田中 雅人 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任研究員 (60648195)
小暮 敏博 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (50282728)
柏原 輝彦 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海底資源研究開発センター, 研究員 (70611515)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 希土類元素 / 吸着 / イオン / XAFS / 風化花崗岩 |
研究実績の概要 |
これまでの我々の研究から、風化花崗岩中の希土類元素(REE)の抽出率は風化の程度(風化度)に影響を受け、中程度の風化度を持つ花崗岩の抽出率が高いことが示唆された。そこで本研究では、様々な風化度の花崗岩を調べるため、日本に加えて、スリランカ、ミャンマーなど、様々な地域における地表面の風化花崗岩を分析した。その結果、風化度が気候と関連しており、熱帯地域の花崗岩は温帯地域の花崗岩よりも風化が進んでいることが確かめられた。これらの結果から、REEの抽出率が高い中程度の風化度を持つ花崗岩は日本などの温帯に存在することが示唆された。さらに本研究では、REEがイオン吸着型鉱床を形成しやすい原因を明らかにするために、いくつかの実験でREE以外の多種の金属イオンとの比較も行った。まず複数の鉱物や支持塩に対する微量元素の分配係数(Kd)を調べた。また、REE吸着時の構造を調べるため、標準物質にREEを含む複数の元素を吸着させ、広域X線吸収微細構造(EXAFS)法を用いて、その吸着構造を調べた。その結果、REEやその他の元素を粘土鉱物に吸着させた試料のEXAFSから、イオンのサイズに応じて形成しやすい表面錯体が異なることが明らかになった。特にBa2+を境界とし、Ba2+よりも小さいイオンは外圏錯体を取りやすく、大きいイオンは内圏錯体を取りやすいことがわかった。これらのことから、イオンの挙動は価数とサイズの影響を強く受け、価数が大きくサイズがBa2+よりも小さいイオンがイオン吸着型鉱床を形成すると考えられる。またこうした分子地球化学的知見は、天然での元素の挙動に大きな影響を与える粘土鉱物に対する金属イオンの吸着を、元素の性質に根ざして系統的に理解することを可能にしており、この結果からREEのイオン吸着型鉱床の特徴が説明可能である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スリランカにおける調査では、既に様々な気候帯における花崗岩の採取、および湿潤地域において表層で強風化土壌が生成している場所において、ボーリングコア試料を採取済みである。この試料を深度方向で調べることにより、風化の程度に対するREEの抽出率などを系統的に議論できる可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
上記で示した通り、本研究においてスリランカで採取したボーリング試料中のREE濃度、CIA(主成分元素濃度分析を含む)、REE抽出率などを明らかにし、風化の程度に対するREEの濃度や抽出特性を明らかにする。またこの研究で、日本におけるREEイオン吸着型鉱床の存在が強く示唆されつつあるので、国内での探査も進め、本研究で明らかにした元素の系統性に基づく国内REEイオン吸着型鉱床の存在について研究を進める計画である。
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