研究課題/領域番号 |
17H04586
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
佐山 敬洋 京都大学, 防災研究所, 准教授 (70402930)
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研究分担者 |
小杉 賢一朗 京都大学, 農学研究科, 教授 (30263130)
寶 馨 京都大学, 総合生存学館, 教授 (80144327)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 森林伐採 / 流出・氾濫 / RRIモデル / パーム椰子 / 土壌水分 / 地下水 / スマトラ島 / バタンハリ川流域 |
研究実績の概要 |
インドネシア・スマトラ島では、森林伐採とプランテーションの拡大によって、河川の流況が変化し、洪水の激化や低平湿地の乾燥化が懸念されている。本研究では天然林と二次林の山腹斜面を対象に、土壌水分と地下水位を計測し、その特性を反映する斜面要素モデルを開発する。そのモデルを流域全体に適用する降雨流出氾濫モデルに実装することで、森林伐採の影響を加味した低平湿地の水管理施策を提言することを本研究の目的としている。令和元年度は8月に現地を訪問して以下の内容を実施した。 1) フィールド調査:バタンハリ川の下流域を調査して泥炭湿地帯における洪水の実態をヒアリング調査した。 2) 現地観測:昨年度に設置した観測井のデータ、土壌水分量計のデータを収集するとともに、今年度は新たに熱帯林とパーム林の観測サイトにおいてテンシオメータを設置して、土壌中の間隙水圧計測を開始した。また、熱帯林斜面における地下水と土壌水分のデータを解析して、熱帯林特有の土壌特性によって、鉛直方向の浸透量が多いことを明らかにした。 3) モデリング:バタンハリ川流域に適用したRRIモデルを上記の現地観測の結果に整合するように調整するとともに、NHRCMと呼ばれる気象庁気象研究所による当該地域の気候変動予測情報のダウンスケーリングプロダクトを用いて、将来の洪水氾濫の頻度や領域を推定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで計6回(予備調査も含めれば計8回)の現地調査を行い、熱帯林・パーム林における斜面観測サイトを設定した。昨年度まで設置した地下水センサーに加えて土壌水分センサー、間隙水圧センサーも稼働しており、観測を継続している。厚い土層に覆われた熱帯地域特有の流出機構や二つの斜面の流出特性の違いも明らかになりつつある。その知見を反映した流域スケールのモデル構築についても順調に進んでおり、気候変動の予測についても解析を開始している。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、これまでに設置した観測データを統合的に解析して、熱帯林とパーム林斜面における降雨流出機構の類似性と違いを明確にする。また、これまでの分析で明らかになってきた対象地域の特徴的な流出機構(粘土成分が多く深い土層に覆われた斜面にも関わらず、鉛直浸透量が多く地下水の変動も大きいという特徴を有す)を妥当に再現できるようにRRIモデルの改良を行い、流域全体の降雨流出・洪水氾濫を再現するようにモデリングを進める。構築したモデルで気候変動の影響予測を行って、特に流域下流部の泥炭湿地帯におけるパーム林のプランテーション農業などに及ぼす洪水被害を推定する。
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