研究課題/領域番号 |
17H04587
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
滝沢 智 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (10206914)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 間欠給水(IWS) / water level monitoring / household water use / Kathmandu |
研究実績の概要 |
1.人口急増都市における間欠給水(IWS)の実態把握と水源選択・水利用量に関する調査 IWS が報告されているネパールなどにおいて、家屋の屋上貯水槽の水位を観測するための高精度データロガー(DLST)を設置し、同時に水の使用時間を記録する調査を実施した。この調査で取得した貯水槽水位変動のパターンから、時間帯ごとの水利用の用途を推定するための変動パターン解析手法を考案した。さらに、各家庭での水利用のアンケート調査とDLST による水利用調査結果を組み合わせて解析することで、IWS が水源選択と水利用のパターンや水量に与える影響を解析し評価した。 2.間欠給水(IWS)地域における水利用・水供給改善策の検討 水質分析機器・簡易水質試験キットを用い、それらの機器の信頼性も評価しつつ水質調査を行った。ヤンゴン市では地下水を利用した水道において、揚水ポンプが間欠運転をしているため、給水も間欠となっていた。さらに、地下水には、高濃度の塩分、アンモニア、鉄などが含まれており、水質的にも問題があることが確認された。さらに、各家屋の貯水槽においても、水質の低下が見られた。 3.ヤンゴン市内では、ボトル水の配達が広く行われており、家庭用水処理装置(HWT)は比較的少なかった。これは、水源が不安定で、間欠給となっていることや、水道水を飲料水としてではなく、雑用水として使用することが一般的となっていることなどが影響していると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
提案した研究項目について、以下のような研究成果を得た。 1.人口急増都市における間欠給水(IWS)の実態把握と水源選択・水利用量に関する調査 間欠給水を行っているカトマンズ市(ネパール)、ヤンゴン市(ミャンマー)において、間欠給水の実態調査を行った。その結果、カトマンズ市では、市内の需要家への給水時間が週に2時間から24時間給水まで多くの違いがあり、不公平となっていることが明らかとなった。この結果をもとに、雑誌論文1報を公表した。 2.間欠給水(IWS)地域における水利用・水供給改善策の検討 間欠給水の下では、水道以外に、地下水、トラック給水、ボトル水など多様な水源に依存していることが明らかとなった。特に、トラック給水の水質は悪く、家庭内での貯水でも水質が悪化することがしめされた。これらの結果については、雑誌論文2報を公表した。 3.家庭用水処理装置(HWT)の普及状況および処理性能を評価し,安全な飲料水供給のための課題抽出と技術的な解決策の検討について,チェンマイ市(タイ国)やハノイ市(ベトナム国)における現地調査を行い,その結果を雑誌論文1報として出版した。
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今後の研究の推進方策 |
(1)平成30年度に行ったヤンゴン市における水供給の実態調査をさらに推進し、研究対象とする西部地区において、間欠給水の実態を調査する。間欠給水の原因となっている水不足について、ヤンゴン市の水源別の供給可能量と将来の水量を予測する。 (2)現在の水需要を調査し、将来の水不足量を推定する。多様な水源を活用することによる水供給改善策を検討し、異なる改善策を比較評価する。 (3)また、間欠給水による水質悪化の実態を調査する。家庭用水処理装置(HWT)の普及状況および処理性能の評価、安全な飲料水供給のための技術として、浄水処理との水質・費用の比較から、最適な浄水技術を提案する。
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