研究課題/領域番号 |
17H04588
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
藤井 学 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 特任准教授 (30598503)
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研究分担者 |
長濱 祐美 (名尾祐美) 茨城県霞ケ浦環境科学センター(湖沼環境研究室、大気・化学物質研究室), 湖沼環境研究室, 技師 (00618506)
吉村 千洋 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 准教授 (10402091)
菊地 哲郎 茨城県霞ケ浦環境科学センター(湖沼環境研究室、大気・化学物質研究室), 湖沼環境研究室, 技師 (50453965)
伊藤 紘晃 熊本大学, くまもと水循環・減災研究教育センター, 助教 (80637182)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 藍藻毒 / 微量金属 / 窒素固定 / 細胞酸化ストレス / 微生物多様性 |
研究実績の概要 |
モリブデンや鉄などの微量金属は、淡水性藍藻類の毒素生産や増殖に重要な窒素固定活性と密接な関係にある。本研究では、室内藻類培養試験ならびに国内外での野外調査を通して、微量金属が藍藻類の増殖や代謝特性を明らかにすることを目的としている。藍藻毒の生成過程において、細胞酸化ストレスが関与していることが指摘されていることから、室内試験では藍藻類(Cylindrospermopsis、Microcystis)の培養過程で微量金属を制限することによって細胞ストレスを与え、細胞ストレスと藍藻毒、窒素固定特性の関連性を明らかにする実験を行った。その結果、微量金属が不足する条件では細胞酸化ストレスが上昇し、細胞当たりの藍藻毒量が増加した。さらに、藍藻毒の生産速度は微量金属濃度が中程度(例えば鉄については~100nM)において毒素生産が抑制された。窒素固定応答に対する微量金属の影響を調べた実験では、微量金属濃度が高い培養条件で細胞増殖と窒素固定活性が増加した。さらに、窒素固定培養下で毒素株の増殖速度は高かったことから、微量金属の生物利用性が毒性藻類の増殖や窒素固定に影響を及ぼすことが示された。国内外の野外調査では、夏季のアオコ発生時に藻類・水試料を採取し、藻類試料について16S rRNAシーケンス解析を実施した。その結果、藍藻類の中でも主としてMicrocystisやClylindrospermopsis、Anabaena等が検出された。環境・生態パラメータの統計解析を行った結果、モリブデンと鉄、コバルト濃度と酸化ストレス遺伝子の間に正の相関が見られた。さらに、藍藻毒の生成と微生物多様性指標には負の相関が見られた。以上の結果は、微量金属の生物利用性が細胞の酸化ストレスと関連し、細胞ストレスから生じる毒素生産が水域の微生物多様性に影響を及ぼしている可能性を示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究1年目となる平成29年度の研究では、国内外における野外調査の実施と水・藻類試料の採取、ならびに微量金属を含む種々の水質分析を実施した。さらに、藻類培養系を構築し、微量金属が藍藻類の毒素生産や窒素固定特性に及ぼす影響を調べた。従って、現在までの研究は、概ね順調に進んでいると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
研究2年目となる平成30年度の研究では、国内外における野外調査を継続して実施すると共に、複数年における観測データを取りまとめ、統計学的手法も活用して藍藻類の増殖・代謝特性と微量金属の関連性を明らかにする。さらに、実験室内における藻類培養系を継続し、微量金属の変動に対する窒素固定、微量金属摂取、毒素生産の応答を網羅的に調べる予定である。
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