研究課題/領域番号 |
17H04595
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
趙 世晨 九州大学, 人間環境学研究院, 教授 (80304848)
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研究分担者 |
市原 猛志 九州大学, 大学文書館, 協力研究員 (00590564)
箕浦 永子 九州大学, 人間環境学研究院, 助教 (70567338)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 満鉄付属地 / 駅前広場 / 駅前通り / 駅前公園 / 空間計画手法 |
研究実績の概要 |
本研究は、かつて中国に存在した「南満州鉄道付属地」(以下は満鉄付属地)を対象に当時の史料を解読した上で、付属地開設同時の情報を把握し、現地の研究協力者と共同で総合調査を実施して、「満鉄付属地」の都市空間の構成及びその変容を明らかにすること、そして市街地 の構成、配置、建築物等を実測調査し、「満鉄付属地」に関する空間情報のデータベースを作成する共に、3次元コンピュータグラフィックス(3DCG)による「満鉄付属地」の再現を行うことによって、今後、日中両国における近代都市史を理論的に分析するための資料・情報を提供し、都市文化遺産としての「満鉄付属地」の再評価に繋げることを目的としている。 昨年度に続き、既存資料、国内外の地図資料などの収集を行い、デジタル化すると共に、関連研究のレビューを行った。また、現地調査では、大連市、瀋陽市、遼陽市、鞍山市、大石橋市、丹東市、長春市にて実施し、鉄道周辺及び満鉄時代の市街地の現況調査及び関連資料の収集を行った。特に「駅前広場」を中心に比較分析を行った結果は次の通りである。 日本内地における駅空間の計画手法と同様の形式が見られる満鉄付属地もあれば、長春のように鉄道用地内には広場を設置せずに市街用地で旅客を捌く空間を確保するもの、鐵嶺のように鉄道用地部と市街用地部とが一体的に広場として確保されているもの等、内地より多様な形態の駅前広場が計画されていた。駅前通りにおいては、駅舎から直線的に通りを計画するといった日本内地ではない計画がなされていた。駅前公園においては、設置されていた付属地は少なかった。また、面積の縮小や公園総面積に対する割合も小さいため、駅前公園の重要性は低いと考えられる。これは日本内地の駅前広場における前庭としての役割から交通処理を行うための駅前広場へと変化していったことに通ずることであると推測できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者は、研究用のコンピュータやソフトなどの設備は常備していること、また、すでに海外学術調査の実績をつんでおり、綿密な研究計画を立てることにより研究は順調に進んだ。さらに、私達はこれまで約10年間にわたり、中国の都市調査・研究を行ってきた。中国では公的なデータや地図情報の整備は不十分であるが、現地の大学関係者や行政担当者の協力を得ていることから、資料収集は効率的に実施することができた。現地調査では、中国国内研究協力者の都合で少し延期されたが、ほぼ計画の通りに現地調査を行うことが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度では、総合調査を再度行う。研究分担者全員が、同一の経路で、現地の観察調査を行う。今まで調査分析してきた事項の再確認と補充調査を兼ねる。予定されている旅程は、福岡→大連→営口→奉天→安東→撫順→長春→大連→福岡である。また、地元大学の研究者と共同で、本研究の成果をもって満鉄付属地を都市の文化遺産または観光資源として修復・保存するように各対象都市の行政に働きかけていきたいと考えている。
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