研究課題/領域番号 |
17H04596
|
研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
篠崎 正彦 東洋大学, 理工学部, 准教授 (10312175)
|
研究分担者 |
西村 伸也 新潟大学, 自然科学系, 教授 (50180641)
内海 佐和子 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 准教授 (10398711)
齊藤 雅也 札幌市立大学, デザイン学部, 教授 (20342446)
棒田 恵 新潟大学, 自然科学系, 助教 (80736314)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | ベトナム / 農村 / Duong Lam / Phu Luu / 住居 / 生活行動 / 温熱環境 |
研究実績の概要 |
2018年度は、当初の研究計画にもとづき、やや近代化の進んだ集落でありハノイ市に隣接するBac Ninh省Phu Luu村にて調査を行なった。これは前年度に調査を行なった、ハノイ市Duong Lam村が伝統性を色濃く残すに対して近代化の影響を比較検討するためである。調査内容は両調査地とも同様で、それぞれ6件ずつの家屋を調査対象としている。調査項目は、居住者のプロフィールを把握するインタビュー、配置図を含めた家屋平面の実測、1日を通じての居住者の生活行動の観察、生活行動の場における温熱環境の計測などである。 調査によって得られたデータは一部、分析の終わっていない部分もあるが、これまでのところ以下の点が判明している。Phu Luu村でも軒下などの半屋外空間での生活行動が行われており、敷地内でも温熱環境的に優れている場所を居住者が選択して行動している可能性が高いことがわかった。ただし、Duong Lam村に比べて半屋外空間での行動が前行動に占める割合は低くなっており、この理由が生活スタイルの近代化による影響なのか、あるいは、半屋外空間の面積が縮小しているなど家屋の物理的な要因の影響なのか、より詳しい検討が必要であると考えている。 伝統的な形態の家屋が少なくなっていることや、開口部により気密性の高い建具を使用しているなど、屋内と半屋外空間の物理的関係性も変化していることが確認できた。また、高齢者のみの居住世帯もPhu Luu村には見られ、世帯構成の変化が生活行動に及ぼす影響も考慮に入れた上で、両調査地で得られたデータの比較を行う必要があることが判明している。 これらの実績を踏まえた上で、2019年度には再度、Duong Lam村で同様の調査を行い、これまでの仮説の検証を行なっていきたい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記のように、現地調査を含め研究計画は順調に進行している。ただ、生活行動の観察・採集や家屋の実測に当初予想より時間がかかることが2017年度の現地調査により分かり、2018年度から研究組織を1名増員(新潟大学・棒田恵)し、より確実に現地調査を行う体制を整えた。 4年間の研究期間の初めの2年間で伝統性の強い集落と近代化の影響の大きい集落それぞれで調査を行い、比較するデータを得ることができたことで、研究の目的に向けて大きな進展を得ることができた。今後はより調査事例を増やし、研究の精度を高めることを心がけたい。 また、複数分野の研究者が参加する研究を進めていく中で、調査対象地の住居が持つ様々な面に気づかされることが出てきており、本研究の目的のみならず、より発展的に研究を展開していくことも視野に入れて研究を進めていく行く予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画どおり研究は進んでおり、研究計画を変更する必要性は感じられない。2019年度、2020年度はそれぞれ再度、伝統性の強く残る集落と近代化の進む集落でこれまでと同内容の調査を行い、当初立てた仮説の検証と精緻化に努めたい。それにより、蒸暑地の家屋が伝統的に備える半屋外空間のどのような具体的な形態とそこで行われる具体的な生活行動がどのように関連しているかを明らかにし、さらには最終的な目標である環境的持続性と社会的持続性の両立している状況を明快に説明できることを目指す。 また、現地共同研究者との関係は良好であるが、調査データの解釈や研究成果の発表についてより緊密な関係を築いて行きたい。
|