(1) 低温環境に生息する魚類腸内容物から分離した低温菌Shewanella vesiculosa HM13を宿主とした外来タンパク質分泌生産系の開発を進めた。本菌は、主要な分泌タンパク質であるP49を細胞外膜小胞の積荷として生産するため、P49をキャリアとすることで、外来タンパク質を膜小胞の積荷として生産することを試みた。低温菌Desulfotalea psychrophila DSM12343由来のBglA、低温菌Pseudoalteromonas nigrifacience Sq02由来のFkpAとPlsY、常温菌Pseudomonas putida KT2440由来のEstA、常温菌Shewanella oneidensis MR-1由来のOmcAとMtrCの遺伝子をそれぞれP49遺伝子の3´末端に融合し、S. vesiculosa HM13を宿主とした発現を試みた。その結果、EstA、OmcA、MtrC、PlsYについては、融合タンパク質の発現は確認できなかった。BglA融合型P49については、細胞画分に検出されたものの、膜小胞画分からは検出されなかった。一方、FkpA融合型P49は、細胞画分、膜小胞を除去した培養上清画分に加えて、膜小胞画分からも検出された。 (2) 低温菌P. nigrifacience Sq02の主要分泌タンパク質P320が、P320遺伝子近傍の遺伝子群がコードするⅡ型分泌装置に類似した装置によって細胞外に移行することを見いだした。一方、P320の機能解析を進めた。P320欠損株では、野生株に比べてバイオフィルム形成能が低下していたが、P320を含む培養上清をP320欠損株に添加するとバイオフィルム形成能が向上することが見いだされた。P320は、P320生産細胞のみならず、P320非生産細胞のバイオフィルム形成能も向上させることが示唆された。
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