研究課題/領域番号 |
17H04602
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
上谷 浩一 愛媛大学, 農学研究科, 准教授 (80638792)
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研究分担者 |
田中 憲蔵 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 植物生態研究領域, 主任研究員 等 (30414486)
伊東 明 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (40274344)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 東南アジア / 熱帯雨林 / 系統地理 / レフュジア |
研究実績の概要 |
東南アジア熱帯雨林は,過去の気候変動と海水準変動による森林面積の拡大・縮小を繰り返しながら現在の分布に至っている。熱帯林縮小期のレフュジアの特定と森林面積の変動の歴史の解明は,現在の熱帯林の生物多様性とその地理的分布を明らかにするために重要であるが,これまでの研究では熱帯林の歴史的変遷について,異なる見解が示されている。本研究の目的は,熱帯樹木の遺伝的変異パターンから過去の森林動態を明らかにすることによって,氷河期レフュジアの位置を特定することである。このために,スンダ陸棚中央の島嶼部を中心に7地点での植生調査とサンプル採取,そして熱帯雨林樹木7種の集団遺伝解析を行う。
29年度はブルネイ,マレーシアサラワク州およびマレー半島での植生調査およびDNA分析用の集団サンプルを採取し,それらの一部についてDNA分析を行った。その結果,以下のことが明らかになった。(1)フタバガキ科Shorea curtisii24集団の葉緑体塩基配列および各マイクロサテライトの解析結果から,マレー半島のS. curtisii集団は過去にボトルネックを受けた後,分布を急速に拡大したことが示された。(2)ブルネイで採取したフタバガキ科4属8種の集団サンプルについて,葉緑体および核遺伝子のDNA配列を決定し,種間での遺伝的変異パターンを比較した。(3)マラッカジンコウ(Aquilaria malaccensis)の葉緑体DNA変異の地理的分布を調査した結果,スンダ大陸中央部に位置するナトゥナ島のハプロタイプは,スマトラや西カリマンタンで見つかったハプロタイプとは異なっていることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
29年度は,調査を予定している7地点の内,3地点で調査を実施することができた。植生調査に加え,各地点でDNA分析に十分な数のサンプルを得ることができた。予定しているインドネシアでの野外調査についても,現地カウンターパートと十分な議論をすることができた。DNA分析については,葉緑体DNA塩基配列と核マイクロサテライト領域の変異を調査した。まだ,解析する個体数はまだ十分ではないが,今後の研究の具体的な方向性を決めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,インドネシアでの野外調査およびサンプリングを集中して行う。また,分析の完了していないサンプルの分析を行う。フタバガキ科については29年度に得たRNAseqのデータを解析し,新たなDNAマーカーを作成する。これによって,サンプリングがほぼ完了している3種のフタバガキ科ショレア属について,ゲノムレベルでの集団遺伝解析を行う予定である。
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