研究課題
ハツカネズミ(Mus musculus)およびクマネズミ(Rattus rattus)で代表されるマウス属およびラット属は、インドおよび東南アジアに多様化の拠点を持つ。その中でも住家性の種は、感染症や農業被害、さらには先史時代の人類の歴史とも密接に関わっているため、その種構成、分布情報、遺伝的空間構造の把握、さらには多様化の歴史の理解に関して早期の解明が切望されている。本研究は、ミャンマーにおける住家性ネズミ類の綿密な採集調査活動と分子系統学的解析を行い、これまで明らかにされている周辺地域の情報と関連づけ、南アジア域および日本列島を含む東アジア域に生息する住家性ネズミ類4種について、進化速度の把握を精度の高く行ったミトコンドリアDNA(mtDNA)をマーカーとして自然史の解明を行った。その結果、6つのmtDNAの型が存在するクマネズミにおいて、II型はミャンマーが主要な多様化拠点であり、13万年前と5.3万年前の劇的な古気候学的変動時期に呼応し、集団の放散的多様化を行い、1万年前ほどにベトナム付近で3回目の放散を行い、その後日本列島に移入した可能性が示唆された。オニネズミ(Bandicoata bengalensis)とナンヨウネズミ(Rattus exulans)はミャンマーに密度高く普遍的に分布するがmtDNAの多様性のレベルは低く、近年の人類の農耕の発達とともに他地域から移入された可能性が示唆された。ミャンマー産ハツカネズミのmtDNAのハプロタイプは一斉放散のシグナルを示し、放散年代はおよそ5000年前と算出され、ミャンマーにおいて初期の稲作が開始された年代と一致した。ミャンマーにおいてハツカネズミはマンダレー近傍の乾燥地帯周辺に分布が限られていた。一般的に密度高く同属種が分布し、稲作地帯でもナンヨウネズミが分布する地域では同種の捕獲を行うことはできなかった。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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