研究課題/領域番号 |
17H04605
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
上原 浩一 千葉大学, 国際教養学部, 教授 (20221799)
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研究分担者 |
國分 尚 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 准教授 (20282452)
渡辺 洋一 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 助教 (30763651)
土松 隆志 千葉大学, 大学院理学研究院, 准教授 (60740107)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 自家不和合性 / 進化 / Petunia |
研究実績の概要 |
1990年代~2000年代にかけて千葉大学園芸学部にブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ等から収集され、系統保存されたPetunia属植物の保存種子から自家和合性の Petunia axillaris subsp. axillaris (自殖型)、Petunia axillaris subsp. parodii、Petunia axillaris subsp. subandina、Petunia occidentals、Petunia exserta、および自家不和合性を示す Petunia axillaris subsp. axillaris (他稙型)について栽培を行い、植物体を得た。このサンプルからDNA抽出を行いこれまで知られた自家不和合遺伝子の花粉側因子であるS-RNase遺伝子の増幅を試みた。その結果3つの異なるS-RNase遺伝子の増幅が認められた。この結果からペチュニア属植物の自家和合性進化は祖先種の段階で複数回起きていることが示唆された。30年度はS-RNase遺伝子の探索を継続するとともに花柱側因子のSFLの状況を明らかにするための実験を開始した。また、これらのDNAサンプルについてRAD-seq解析をおこなった。その結果Petunia occidentalsはPetunia axillarisとPetunia inflataの双方のSNPを持っており、両種の雑種起源であることが示唆された。自家不和合性および自家和合性個体の花粉形成の状況を解析する必要があるため、葯内の花粉数をカウントする際に必要な密閉式超音波破砕装置(バイオラプター)を土松研究室に導入した。このように国内実験を進める傍ら、30年12月に29年度繰越分による2週間に及ぶアルゼンチン・ウルグアイの現地調査をおこない、ペチュニア属植物のなかでも主にアルゼンチン、ウルグアイに分布する自家和合種と、それらに近縁な自家不和合種等の詳細な自生地集団データを得ることが出来た。これらを元にさらに詳細な解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
千葉大学に所蔵されている主にアルゼンチン、ウルグアイ産のPetyunia属植物、自家不和合集団の種子を発芽栽培し、得られた植物体から1葯あたりの花粉数等の形質の調査、DNAサンプルの抽出、自家不和合性発現に関わる花粉側因子のS-RNase遺伝子および花柱側因子のSFL遺伝子の探索をおこない、いくつかの該当遺伝子の配列を得た。30年12月にはようやくアルゼンチン・ウルグアイ調査を敢行することができ、多くの自生地集団データを得た。これをもとにPetunia属野生種の自家不和合性の進化の解明と、分子系統解析を進める準備が整った。また、ブラジル調査の準備が進み、31年12月の現地調査のめどが立った。
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今後の研究の推進方策 |
30年度にアルゼンチン、ウルグアイにおいて2週間に及ぶ現地調査をおこない、自生地集団の詳細なデータを取得することができたこれを元に、ペチュニア属自家不和合性遺伝子進化プロセスのさらなる遺伝子解析を進めていく。また、現地調査をおこなった集団については、各集団から10株程度のDNAを抽出し、葉緑体DNAハプロタイプのシーケンス解析をおこない、種間、集団間の遺伝的関係を明らかにする。また、同じDNAサンプルを用い、核DNAについてはMIG-seqまたはRAD-seq解析をおこない、葉緑体DNAのデータとも合わせて詳細な系統関係を明らかにする。 31年度はブラジルの調査を実施する予定である。ブラジルは自家不和合種の分布の中心であり、アルゼンチン、ウルグアイに分布する自家和合種の分布域の周縁部にもあたり、ブラジル固有の自家和合種も僅かながら見られることから、ブラジル産ペチュニア属植物の調査解析も必須である。しかしブラジルはこれまで外国人が野生植物を調査することは困難であった。近年、学術的利用に関しては国際共同研究をおこなう土壌は整いつつあるが、日本人研究者が現地で植物調査・採集をおこなうのはリスクが大きい。そこで東京大学教養学部特任講師のTAVARES VASQUES DIEGO博士(ブラジル国籍)に現地調査の許認可、現地協力者の選定、現地調査を依頼した。DIEGO博士は31年3月にブラジル帰国の際に現地協力者の選定等をおこなった。31年12月に10日間の予定でブラジル現地調査を現地協力者とともにおこなう予定である。 アルゼンチン、ウルグアイについても、30年12月の調査で得られたデータの解析状況により必要となった場合は、31年12月に2名程度で追加調査をおこないたい。
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