研究課題/領域番号 |
17H04616
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研究機関 | 大阪工業大学 |
研究代表者 |
河村 耕史 大阪工業大学, 工学部, 准教授 (00595613)
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研究分担者 |
太田垣 駿吾 名古屋大学, 生命農学研究科, 講師 (50597789)
松本 省吾 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (90241489)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ゲノム / 自家不和合性 / 遺伝資源 / レトロトランスポゾン / コウシンバラ / ノイバラ |
研究実績の概要 |
バラは世界的に繁栄した園芸作物で、これまで3 万品種以上が登録されてきたが、その遺伝的な多様性は極めて低い。既品種間の交雑による品種改良の余地はほとんど残されておらず、稔性や耐病性の低下も顕在化してきた。バラ園芸の持続可能な発展のためには、新しい遺伝資源の発掘と保存が急務の課題である。 本研究は、栽培バラに四季咲き性をもたらした中国の栽培品種コウシンバラに着目した。コウシンバラは四季咲き性だけでなく花の色や匂いなど多くの面で現代バラの鋳型となっているため、コウシンバラに近縁な野生バラは有用な遺伝資源といえる。しかし、コウシンバラの野生起源は未解明であったため、四季咲き性の原因遺伝子KSNの塩基配列の解析をもとに、コウシンバラの野生起源を調べた。その結果、Rosa chinensis var. spontaneaと呼ばれる四川省の野生バラが起源であることが示され、さらに、四川省のなかでも特定の地域に分布する集団が起源に近いことまでわかった。 コウシンバラに由来する四季咲き性を持つ栽培バラからは、KSNに挿入されているトランスポゾンの相同組み換えによって、枝変わりで一季咲き性品種が発生することが知られている。しかし、栽培品種の一系統では、一季咲き性から四季咲き性に枝変わりした品種がおり、これらはコウシンバラとは由来の異なる四季咲き性を持つ可能性があるため、新しい育種素材となりうると考え、その遺伝的な解析を行った。その結果、この系統では、KSNを含む一部ゲノム領域が欠損する変異が四季咲き性をもたらしている可能性が示唆された。 稔性や交配の基本となる自家不和合性の遺伝子基盤を解明するため、ゲノム解析と発現解析を行った。コウシンバラのゲノム情報を利用し、自家不和合性を制御するS遺伝子座の候補領域を特定したうえで、さらに器官特異的な発現様式を調べることで最有力候補を特定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コウシンバラの野生起源の一つがほぼ特定できた。ゲノム解読から雑種起源であることが判明したため、最終年度は雑種起源を明らかにする必要がある。S遺伝子の特定はゲノム解読の成果によって予定どおり進んできた。
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今後の研究の推進方策 |
コウシンバラの野生起源となった雑種の候補種を遺伝分析をもとに特定する。レトロトランスポゾンの挿入変異多型を網羅的に調べる方法を開発し、コウシンバラの起源の解析に適用すると同時に、コピー数が増加している遺伝資源の探索を行う。自家不和合性を制御するS遺伝子座として特定した領域について、交配実験による検証を行う。
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