研究課題/領域番号 |
17H04619
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
浅川 晋 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (50335014)
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研究分担者 |
渡邉 健史 名古屋大学, 生命農学研究科, 講師 (60547016)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 土壌学 |
研究実績の概要 |
熱帯地域を中心に水稲生産に大きな被害をもたらすイネの鉄過剰障害の軽減に関し、ほとんど注目されてこなかった鉄代謝関連微生物に焦点を当てる。鉄過剰障害の主要因である二価鉄の生成に関わる鉄還元菌と鉄過剰障害軽減への寄与が期待される鉄酸化細菌について、西アフリカの内陸盆地水田土壌を対象に、イネ根圏における主要な菌群の種類、生息数、それら微生物群とイネの栄養生理状態との関連性などを調査解析する。鉄過剰障害軽減のため、それら微生物群を制御あるいは利活用する方策を探り、障害発生予測や対策技術を確立するための基盤的情報を得ることを目的とする。 2018年度に続き、西アフリカ、ブルキナファソのKou Valleyの鉄過剰水田圃場を対象とした。土壌溶液中の二価鉄の濃度は73~80mg/Lと高かったが、圃場に隣接した灌漑水路の用水中や水田表面水中の濃度は0.3~2.2mg/Lと低く、二価鉄が灌漑水から直接供給されている可能性は低いことが2018年度の結果と併せて確かめられた。また、これらの水のpHは5.7~6.0と二価鉄の化学的酸化が妨げられる条件にはないことも再確認された。この圃場の障害発生および未発生イネの根、根圏土壌および株周囲のバルク土壌試料を採取した。これらの試料を対象に最確値法で計数した嫌気性鉄還元菌の生菌数と定量PCR法で推定したGallionellaceae科の微好気性鉄酸化細菌の生息数には障害発生・未発生イネの間で差はなく、2017、2018年度とはやや傾向が異なった。また、鉄還元菌を主体とするGeobacteraceae科細菌の生息数と、DGGE法により推定したGallionellaceae科の微好気性鉄酸化細菌の群集構成にも差が見られなかった。採取時のイネの生育段階は移植1ヶ月後、出穂後、開花期と各年度で異なり、これら微生物群集の動態に影響を与えている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度に続き、西アフリカ、ブルキナファソの半湿潤地域の内陸盆地の鉄過剰水田を対象に試料採取と鉄還元・酸化微生物群集の解析等を実施しデータを蓄積しており、計画通りおおむね順調に研究が進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度まで3年間にわたり、西アフリカ、ブルキナファソの半湿潤地域の内陸盆地の鉄過剰水田より水稲栽培期間中に採取した障害発生および未発生イネの根圏土壌試料および根試料より抽出し、保存しているDNAについて、定量的PCR法により、それぞれの試料中のGeobacteraceae科等の鉄還元細菌の生息数を調査する。また、PCR法により鉄還元および微好気性鉄酸化細菌に特異的な遺伝子断片を増幅し、塩基配列を解析することにより、それら微生物群の多様性を明らかにする。さらに、根試料に生息する微好気性鉄酸化細菌の分離を試みる。加えて、最終年度として研究期間中に得られた結果を取りまとめる。これらの結果に基づき、鉄還元・酸化微生物群を制御あるいは利活用する可能性、鉄過剰障害の発生予測や対策技術の確立に向けた研究の方向性について議論し、今後の研究の展開方向を検討するため、現地のカウンターパートの共同研究者を日本に招いてセミナーを行いたいと考えているが、新型コロナウイルス感染症の状況の推移を勘案しつつ検討する予定である。
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