研究課題
本海外調査研究では、食の欧米化・近代化がアジア人の腸内細菌叢にどのような変化をもたらし、 それがアジア人の健康にどのように影響を及ぼしているか、アジア横断的に調査することを目標としている。特に、現代生活習慣病であり種々疾病の元凶である 肥満と糖尿病に着目する。最終年度である本年度は、これまでに収集した、インドネシアとモンゴルのサンプルを重点的に解析した。サンプリングは、健常群(モンゴルでは遊牧民を健常群のコントロールとした)、肥満群、2型糖尿病群、そして肥満+2型糖尿病群、の4カテゴリーを対象に各群30名を目標に、血液検査、糞便の採取、食生活アンケートを行った。インドネシアについては、肥満患者、糖尿病患者、健常者、の3群でそれぞれ異なる菌叢の特徴を見出した。肥満患者には、unclassified Clostridiaceaeの異常増殖が見られ、他のClostridia綱細菌やBacteroidaceae科細菌といった常在優占菌が減少していた。そして、各サンプルの種多様性も減少していた。糖尿病患者においては、血糖値とBacteroides属細菌率が正に相関しており、また、健常者では主である二次胆汁酸が減り、一次胆汁酸と抱合型胆汁酸が顕著に増加していた。一部の抱合型胆汁酸は血糖値調節機能が知られており、Bacteroides属細菌による胆汁酸代謝がインドネシア人における血糖値調節に関わっている可能性が示唆され大変興味深い。モンゴル人においては、糖尿病患者にPrevotella属細菌とLactobacillus属細菌が減少している傾向が見られた。他の国のデータに比較してモンゴル人はLactobacillus属が多い傾向にあることも見出された。これらの2つの菌が、モンゴル人において、2型糖尿病発症抑制に関与していることが示唆され、今後そのメカニズムについて研究を継続したいと考える。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 2件、 招待講演 5件) 備考 (1件)
Gut Microbes
巻: 11 ページ: 205-216
10.1080/19490976.2019.1650997
http://www.agr.kyushu-u.ac.jp/lab/microbt/index2.html