研究課題/領域番号 |
17H04622
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
仲井 まどか 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (60302907)
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研究分担者 |
浅野 眞一郎 北海道大学, 農学研究院, 准教授 (60222585)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | タイワンカブトムシ / 天敵ウイルス / ヤシ類 / バイオタイプ |
研究実績の概要 |
タイワンカブトムシ(別名サイカブトムシ:Oryctes rhinoceros)はヤシ類の害虫である。本種は、1980年代より太平洋州に分布を拡大したが、天敵ウイルスを用いた防除が実施され成功をおさめその被害が抑えられていた。しかし、2007年よりグアム(アメリカ合衆国)を中心に従来のウイルスに抵抗性のバイオタイプ(グアムのGをとってバイオタイプG)が出現した。バイオタイプGが分布する地域(グアム、パラオ、ハワイ、ソロモン諸島など)では、ヤシ類の被害が甚大になり、その被害が拡大しているため太平洋州を中心に大きな問題になっている。本研究は、バイオタイプGのウイルス抵抗性に関する要因の探索を目的としている。 まず、ウイルスを用いた生物検定法を確立するため、タイワンカブトムシの室内飼育方法を最適化を行った。次に、バイオタイプGとバイオタイプNG(Gタイプとは異なるバイオタイプ)を導入して生物検定を行うために、まず日本国内のタイワンカブトムシ個体群を採集し、そのバイオタイプの決定を行った。奄美大島、沖縄本島、石垣島においてタイワンカブトムシ幼虫を採集しバイオタイプの決定を行った。その結果、日本国内で採集した個体群はすべてバイオタイプGであることが判明した。 タイワンカブトムシの被害地域であるグアムとパラオ共和国、既に先行研究を行っているニュージーランドとドイツより共同研究者を東京農工大学(農工大)に招聘し国際シンポジウムを開催した。また、本種の被害の深刻なグアムとパラオ共和国に出張し、同研究の打ち合わせを行った。ハワイで開催された国際学会では、本種の対策についての重点セッションで発表を行った。ハワイ州政府とハワイ大学を訪問して本種の対策について議論した。さらに、ハワイ大学の研究者を農工大に招聘し、タイワンカブトムシの飼育方法についてのworkshopを開催した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
タイワンカブトムシの研究に関する基盤整備を行った。初年度であるため、海外共同研究者を招いて国際研究集会を開催した。その結果、グアム、パラオ共和国、ニュージーランド、ドイツの共同研究者との協力関係が強化した。さらに、海外出張によりグアム、パラオ、ハワイの現地の状況を知り、今後の方針について確認することができた。在日パラオ大使館において打ち合わせを行い、今後の共同研究の体制について議論した。 また、タイワンカブトムシの飼育方法の最適化を検討した。本計画においては、GタイプとNGタイプの個体群を飼育する必要があるため、まず日本国内の個体群のタイプ決定を行った。奄美大島と沖縄本島と石垣島からタイワンカブトムシ個体を採集して遺伝子型を調査したが、いずれもミトコンドリアCO1領域の配列からGタイプであることが確認された。このように、初年度に今後の研究基盤の整備ができたことからおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
タイワンカブトムシ飼育方法としてマットの種類についての最適化を行う。日本国内でこれまで調べられていない地域のバイオタイプの特定を行う。また、パラオ共和国にはGタイプとNGタイプが共存していることがわかったため、パラオ個体群におけるバイオタイプの特定とウイルスの検出を行う。さらに、パラオで採集した個体からウイルスを分離しタイワンカブトムシ個体を用いた増殖を行い、これを用いた生物検定の方法を確立する。
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