研究課題/領域番号 |
17H04627
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
西川 芳昭 龍谷大学, 経済学部, 教授 (80290641)
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研究分担者 |
河瀬 眞琴 東京農業大学, 農学部, 教授 (00192550)
根本 和洋 信州大学, 学術研究院農学系, 助教 (20293508)
冨吉 満之 久留米大学, 経済学部, 准教授 (20506703)
香坂 玲 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (50509338)
入江 憲治 東京農業大学, 国際食料情報学部, 教授 (90408659)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 小農 / 種子調達 / アグロエコロジー / 食料主権 |
研究実績の概要 |
本研究は、条件不利地において、農家の種苗調達に関与する多様なアクターとそれらを支え繋ぐ組織・制度に注目し、その社会独自の発展経路の中で構築された種子調達メカニズムと利用されている言説を社会科学を中心に自然科学の側面も踏まえて分析を行ってきた。2019年度は、研究対象国であるネパールにおいて本格調査に先立つ予備調査を地域NGOのラブグリーンネパール(LGN)およびネパール農業研究機構(NARC)が主体となる形で実施し、本格調査の準備をほぼ終えた。その後、代表者および2名の研究者の病気のため一時停滞し繰り越しを行った。さらに2020年春以降のコロナ禍のため本格調査を実施する見通しが立たなくなったことから、予備調査の結果および比較・代替調査地としていたミャンマーのハイビスカスのデータを中心に整理を行った。 特にミャンマーの事例から、種子の調達を、当該作物以外の作付けや農外活動との関係の中で分析する必要が明らかになり、比較として、研究協力者を含めて日本・ブータン・韓国事例などとの比較も行い、2019年12月にはAPUで開催された国際研究会で報告を行い、Palgraveでの成果出版企画を構想した。 代表者の英国コベントリー大学におけるアグロエコロジー研究を利用して、当初から予定していた西欧的な食料主権を中心とした種子研究のアプローチの視角をアジアからの知見を踏まえて拡大する研究をミャンマー・ブータン・日本の事例を活用して行い、海外からはイラン・スコットランド・ペルーなど東アジア以外の事例を加えて、分散的な品種改良・種子供給・品種利用の制度構築の必要性を提示するに至った。成果は、査読付き論文集として2022年2月にPalgraveから出版した。(研究発表欄では、論文集の記載が出来ないため、雑誌論文の項目詳細を記載した。)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度は代表者及び分担者1名ならびにネパール側協力研究者の病気・入院等により現地調査実施が遅れ、その後2020年度はコロナ蔓延によりネパールにおける現地調査が不可能となったため、遅延及び一部研究方法等の変更を余儀なくされた。 ネパールにおける本調査に代わり、予備調査・代替調査地として検討していたミャンマーにおける実施済み調査ならびに日本国内における調査(研究組織メンバーによるものに加え、協力者が主体的に実施したものを含む)結果を主な分析対象とすることに変更し、研究体制を調整した。 具体的には、オンラインで協議を進め、ルールに基づいた一部費目間流用を行い、研究組織外からの参加も得て2022年2月に英文成果出版を行った。しかし、当初予定していたネパール関係者へのフィードバックは担当研究分担者の実質的離脱もあり期間内に実現できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
種子の品質の理解に関する従来の研究は、農学から見た改良品種の優位性や、経済学から見た収益性など限られた側面からの評価であった。本研究では、より多面的な定義(例えば地域の文化との整合性や調達のタイミングなど生業全体との相関)を試みており、今後農家にとってのローカルの意味や種子更新の理由について調査方法を含め検討していきたい。さらに、西欧的政治経済発展観を参照しつつ、「日本のアニミズム的な農業観」と「普遍的な生命科学の知見」との対話に基づく、内発的発展論の視点での種子システム評価および政策的提言を試みたい。 現地調査(本格調査)の断念については、各種調査・協議のリモート実施を最大限活用して、本研究チーム以外の調査・実践から得られた知見も積極的に利用し、多くの西欧の政治経済的な分析が得意とする普遍的アプローチではなく、文脈依存的アプローチの視角を充分に取り入れた成果分析と社会への還元を積極的に行う。
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