• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2018 年度 実績報告書

アフリカ半乾燥地における農牧共生に基づく持続的農村開発に関する実践的研究

研究課題

研究課題/領域番号 17H04628
研究機関近畿大学

研究代表者

鶴田 格  近畿大学, 農学部, 教授 (60340767)

研究分担者 杉村 和彦  福井県立大学, 学術教養センター, 教授 (40211982)
池上 甲一  近畿大学, その他部局等, 名誉教授 (90176082)
研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2021-03-31
キーワードアフリカ農村研究 / 農牧社会 / 持続的土地利用 / 土地収奪
研究実績の概要

本研究はタンザニア中部の半乾燥地を事例に、農業と牧畜が共生する持続可能な農村開発の方向性を探るものである。
まず代表者の鶴田格が、これまで研究拠点としてきたドドマ州Majeleko村において、農牧民ゴゴ人を対象に、前年度より引き続き食料生産、食料消費、現金獲得活動、土地利用の変遷などに関する世帯ごとの調査を実施し、データを蓄積した。また実践的なプロジェクトとして、前年度に引き続き、干ばつに弱い主作物トウモロコシに代わる雑穀生産の普及、化学農薬に代わる生物農薬(ニームなど)の普及、植林の普及などを行い、一定の成果が得られた。とりわけ植林に関しては村民の意識が高く、村民による苗生産グループを組織し、当該年度に4,000本以上の苗の植え付けに成功した。
分担者の杉村和彦は、同じドドマ州において、地域資源の効率的利用の視点から地域内のエネルギー自給の可能性を検討した。その結果、コミュニティレベルのソーラー発電が、農牧民の分散的・流動的社会に適したエネルギー源であるとの結論に達した。また前年度にひきつづき、地域資源のひとつバオバブの実を利用した養鶏の可能性についても検討を行った。
また分担者の池上甲一は、ローマにおいて、国連食糧農業機関(FAO)を訪問し、「農業投資責任原則」および「農業投資に関する自発的ガイドライン」、「責任ある契約農業原則」の運用状況と最近の動き、近年FAOが力を入れているアグロエコロジーの推進方策などについて資料を収集した。その結果、農業だけでなくフードシステムへの投資も対象とする「責任ある投資」(Responsible investment in agriculture and food system)概念の適用範囲が広がり、アフリカを含む「途上国」農業のグローバル・バリューチェーンへの統合という最近の開発動向に制約を課す動きがあることが判明した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

タンザニア、ドドマ州でこれまで定着調査を行ってきたMajeleko村において、これまでと同様のデータの収集が順調に進んでいる。具体的には農業、牧畜、家計、毎日の食事、土地利用、イノベーション、エネルギー利用などに関する調査を、村民の協力のもとに行ってきた。
またこれまでと同様、ドドマ市に拠点をおく環境NGO・EGAJの協力をえて、同村ならびにその隣村、また州北西部のItiso地区で、環境保全型農業、持続可能な土地利用、植林などに関するプロジェクトを継続している。とりわけ植林に関しては、調査対象としている複数の村において植林の苗を作る農家グループを組織し、植林が順調に進んでいる。分担者の杉村が担当する養鶏や自然エネルギーのプロジェクトに関しても、EGAJ, 日本のNGO、タンザニアの大学研究者らの協力を得て着実に進んでいる。

今後の研究の推進方策

平成30年度の調査を踏まえて、鶴田、杉村によるMajeleko村および隣のMbelezungu村でのデータ収集を続ける。これまでのテーマに沿ったデータ収集に加えて、今年度は農業や牧畜におけるイノベーションに焦点をあてた調査を行う予定である。
また平成30年度から引き続き、半乾燥地での持続可能な生活・生業様式の確立を目指した実践的プロジェクトを継続する。これまでと同様に(1)持続可能な農牧複合の在り方の模索、(2)無農薬での換金作物(野菜)生産、(3)村の森林資源の回復、(4)自然エネルギー・システムの導入、(5)持続可能な養鶏、といったテーマについて、現地NGOならびに村民の協力のもとに実践していく。(2)、(3)についてはある程度目途がたったため、今年度はほかのテーマ、とりわけ最も困難な(1)についても何らかの見通しが得られるよう取り組んでいく予定である。
さらに今年度は現地研究者、NGO関係者を交えた農牧社会の開発に関する小規模な研究集会をドドマ州で開催し、農牧民社会の現代的変容や農村開発の実践についての議論を深める。
また分担者の池上をFAOに派遣し、国連のよびかけで今年から始まった「家族農業の10年」に関連して、途上国の食料安全保障確保と貧困・飢餓撲滅を進めるためにどのような家族農業に関する国際的政策が推進されるのか、またそれがアフリカに与える影響は何か、といった点について調査する。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (3件) (うちオープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件、 招待講演 3件) 図書 (2件)

  • [雑誌論文] ICT・AI技術は農法たりえているか―農業技術と農法論の視点から2019

    • 著者名/発表者名
      池上甲一
    • 雑誌名

      農業と経済

      巻: 85-3 ページ: 72-86

  • [雑誌論文] SDGs時代におけるサステナビリティと日本農業:農業・農村のサステナビリティ科学に向けて2018

    • 著者名/発表者名
      池上甲一
    • 雑誌名

      村落社会研究ジャーナル

      巻: 25-1 ページ: 17-34

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 農業における知的財産権をめぐる世界的動向と日本農業にとっての課題2018

    • 著者名/発表者名
      池上甲一
    • 雑誌名

      農業と経済

      巻: 84-11 ページ: 6-20

  • [学会発表] Towards Sustainability Science of Agriculture and Rural Community in the Era of SDGs2018

    • 著者名/発表者名
      Koichi Ikegami
    • 学会等名
      ASEAN Way Forward for SDGs and COP21 through Social and Sustainability Sciences (Phase 2)
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Building Sustainable Agri-Food Systems under the Divided World2018

    • 著者名/発表者名
      Koichi Ikegami
    • 学会等名
      The Sixth International Conference of Asian Rural Sociology Association
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Agri-Food System Era 4.0: Dream and Reality of Current Digital Agri-Food System2018

    • 著者名/発表者名
      Koichi Ikegami
    • 学会等名
      Agrifood System International Conference (ASIC) 2018
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Introductory Remarks for Round Table on Food, Agriculture and Power in the 21st Century: Challenges and Futures of Critical Agrarian and Peasant Studies2018

    • 著者名/発表者名
      Koichi Ikegami
    • 学会等名
      29th Annual Conference of Japan Society for International Development
  • [図書] The Environmental Crunch in Africa: Growth Narratives vs. Local Realities2018

    • 著者名/発表者名
      Tadasu Tsurutaほか共著(Jon Abbink編)
    • 総ページ数
      324
    • 出版者
      Palgrave macmillan
    • ISBN
      978-3-319-77131-1
  • [図書] 改訂新版 新書アフリカ史2018

    • 著者名/発表者名
      杉村和彦ほか共著(宮本正興・松田素二編)
    • 総ページ数
      776
    • 出版者
      講談社
    • ISBN
      978-4-06-513948-6

URL: 

公開日: 2019-12-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi