研究課題
ネパール、ムスタン地方における調査、サンプリング本年度は、9月24日から10月8日にかけて、ネパールの農業研究機構(NARC)をカウンターパートとして実験室等の施設の提供を受け、日本からいくつかの機材を搬入し、実験機器の搬入を行い、血液からのDNAの抽出を行える実験室を立ち上げた。ここを拠点として、約2週間ネパールの北部のチベット国境に近い山岳地域であるムスタン地方において在来馬の調査を実施した。具体的にはJomsom、Kagbeni、Muktinath等のご地域にて計35個体の血液を採取するとともに、飼育頭数、飼育形態、利用実態、由来、移動の聞き取り調査、体高等の体尺の測定、毛色等の外貌、年齢、性別、家系等の個体情報の記録を行った。次に、採取した血液よりDNAを抽出し、ネパールにおける輸出許可、および日本における動物検疫所の手続きを経て日本に搬入した。2.DNAサンプルの解析精製されたネパール在来馬のDNAサンプルを用いて、今年度はY染色体のハプロタイプを中心に解析を行った。これまでに報告されているウマY染色体上に存在する多数のSNPsのタイピングを行い、それらのSNPsの遺伝子型の組み合わせからY染色体のハプロタイプを求めたところ、ネパール在来馬には少なくても3種類のハプロタイプが存在し、それらの中には、これまでにあまり報告されていない特徴的なハプロタイプも存在していることから、ネパール在来馬は固有の父系の遺伝的特徴を持つ可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
当初経過のネパール在来馬の調査、サンプリングについてはほぼ当初計画通りに実施されえている。さらに、それらのDNAサンプル用いたネパール在来馬の遺伝学的特徴の解析については、関連した研究の進展により明らかとされたY染色体のSNPsの解析法を用いることで、当初計画にないY染色体のハプロタイプの解析を行った。ブータンにおける予備調査については、先方との調整が進まず今年度は実施できなかったが、引き続き予備調査に向けて調整を続けている。以上、一部当初計画に遅れがある課題もあるが、当初計画にない新たな研究計画の実施も行うことができ、総じておおむねに順調に進展していると考えられた。
当初経過に沿って、引き続きネパールの他の地域おける調査、サンプリングを継続するとともに、ブータンにおける予備調査の調整を継続する。また、今年度の研究により、ネパール在来馬が父系において興味深い遺伝的特徴を持つことが示唆されたため、今後、より詳しくY染色体のハプロタイプの解析を行い、これまでに報告されている他の国の在来馬のY染色体のハプロタイプと比較する。その結果、特定の在来馬にネパール在来馬のハプロタイプと類似したハプロタイプがある場合には、それらの国の在来馬の調査を行うことも計画する。
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Report of Society for Researches on Native Livestock,
巻: 28 ページ: 53-63