研究課題
ネパール、ジュムラ地方における調査、サンプリング本年度は、9月9日から9月29日にかけて、ネパールの農業研究機構(NARC)をカウンターパートとして実験室等の施設の提供を受け、日本からいくつかの機材を搬入し、実験機器の搬入を行い、血液からのDNAの抽出を行える実験室を立ち上げた。ここを拠点として、約2週間ネパールの西部の山岳地域であるジュムラ地方において在来馬の調査を実施した。具体的にはNepalgunj、Jumla、Lumle等のご地域にて計32個体の血液を採取するとともに、飼育頭数、飼育形態、利用実態、由来、移動の聞き取り調査、体高等の体尺の測定、毛色等の外貌、年齢、性別、家系等の個体情報の記録を行った。次に、採取した血液よりDNAを抽出し、ネパールにおける輸出許可、および日本における動物検疫所の手続きを経て日本に搬入した。2.DNAサンプルの解析精製されたネパール在来馬のDNAサンプルを用いて、ミトコンドリアDNAおよびY染色体のハプロタイプを中心に解析を行った。ミトコンドリアDNAについては、多様性に富むD-loop領域についてその塩基配列の解析を行った。Y染色体については、これまでに報告されているウマY染色体上に存在する多数のSNPsのタイピングを行い、それらのSNPsの遺伝子型の組み合わせからY染色体のハプロタイプを求めた。これらの結果、ミトコンドリアDNAについてはいくつかの個体で固有のハプロタイプが検出され、Y染色体についても少なくてもアジア在来馬にはこれまで報告されていないハプロタイプが存在していることから、ネパール在来馬は固有の遺伝的特徴を持つ可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
ネパール在来馬の調査、サンプリングについてはこれまでに当初計画通りに実施され、さらに前年度の調査結果を踏まえて新た調査地も加えて実施している。さらに、それらのDNAサンプル用いたネパール在来馬の遺伝学的特徴の解析については、ミトコンドリアDNAの塩基配列解析およびY染色体のSNPsの解析法を用いることで、当初計画に比べてより詳細な解析を行った。ブータンにおける予備調査については、先方との調整が予定通りに進まず実施できなかったが、ネパールの調査地を拡大することで、当該地域における十分な在来馬のサンプルを得ることが可能となった。以上、一部当初計画にしたがって予定通り実施されなかった課題もあるが、当初計画にない新たな研究計画も実施することができ、総じておおむねに順調に進展していると考えられた。
既にネパールの中央部および西部地域についてはサンプリングを完了したため、引き続きネパールの東部地域おける調査、サンプリングを継続する。また、これまでの研究により、ネパール在来馬が父系において興味深い遺伝的特徴を持つことが示唆されたため、今後、より詳しくY染色体のハプロタイプの解析を行い、これまでに報告されている日本を含めたアジア諸国の在来馬のY染色体のハプロタイプと比較するとともに、必要に応じてそれらの国の在来馬のDNAサンプルを新たに入手することを試み、より詳細な比較を行うことも計画する。特に、キルギス等のネパール在来馬と関係が深いと考えられる地域の在来馬DNAサンプルの入手を試みる。
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