研究課題/領域番号 |
17H04639
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
山口 良二 宮崎大学, 農学部, 教授 (90150169)
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研究分担者 |
乗峰 潤三 宮崎大学, 産業動物防疫リサーチセンター, 教授 (30627667)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 豚コレラ / 豚流行性下痢(PED) / 病理 / 抗体作成 |
研究実績の概要 |
東南アジアにおける日本の脅威となる豚の越境感染症のうち、豚コレラについて病理学的調査を実施している。日本でも現在、新しく発症して養豚場でも大きな問題となっている。東南アジアのうち、ベトナムとミャンマーについて調査したが、ベトナムでは 病理学的調査が進行している。ベトナムでも、高病原性のPRRSと肉眼的、臨床的に類似点が多いので、病理学的に調査することには意義がある。ベトナムの4県の異なった農場でアウトブレークした20-50日齢の子豚と母豚の12頭を豚コレラの病理解剖を行った。症例はOIEの推奨するリアルタイムPCRすべて急性症例で死亡率は10-70%であった。アウトブレークの期間は1-2週間であった。外貌は10頭のうち6頭の体幹部皮膚に発疹が、9頭の耳には斑状出血が見られた。共通した剖検所見としては脳の充血、下顎リンパ節の充出血、腸間膜リンパ節の充出血、耳にみられた斑状出血であった。その他腎臓等にも出血が見られた。組織学的には脾臓とリンパ節のリンパ球著明な減少と充血、扁桃の拡張とリンパ球の著明な減少、間質性気管支肺炎、非化膿性脳炎等がみられた。抗豚コレラ抗体を用いた免疫化学染色では、脳、扁桃、唾液腺、リンパ節、肺、胃、小腸、大腸、腎臓に陽性を認めた。細胞としては、リンパ球、上皮細胞、血管内皮、神経細胞に陽性が見られ、多種類の細胞が陽性、すなわち、ウイルスが増殖することがわかった。同新鮮材料をストックし、遺伝子RNAを抽出した。その遺伝子についてRT-PCRを行い、シークエンスを行っている。このデータは整理して学会報告又は論文にする。さらに、ベトナムでは豚流行性下痢(PED)が10年以上発生している。日本では2013年から大発生し、近年散発的になったが、その状況は不明である。日本での発生を解析した上で、ベトナムの症例について病理学的解析を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
東南アジアにおける日本の脅威となる豚の越境感染症のうち豚コレラの病理学的調査を実施した。もっとも、日本に越境感染症として危惧される感染症であり、日本でも現在、新しく発症して養豚界で大問題となっている。しかし、日本では病態の詳細は不明のまま殺処分が実施されている。東南アジア諸国のうち、ベトナムの豚コレラの病理学的調査をすすめた。常在化している高病原性のPRRSと肉眼的、臨床的に類似点が多いので、病理学的に調査することには意義があり、明確にする必要がある。ベトナムの4県の異なった農場で発生した計12頭を豚コレラの病理解剖を行った。症例は地区毎に別々に発症したものの、OIE推奨リアルタイムPCRにより全例ウイルス陽性、死亡率10-70%の急性症例である。アウトブレークの期間は1-2週間で、外貌所見、剖検所見、組織学的検索をすすめた。その後、抗豚コレラウイルス抗体で、ウイルス局在を調べ、上皮、リンパ球、血管内皮に陽性を見いだしそれぞれの場所で増殖していることを見いだした。現在は、データ整理中で、さらに詳細に解析する必要があれば他の抗体用いて解析する。さらに、同新鮮材料をストックし、遺伝子RNAを抽出し、その遺伝子についてRT-PCRを行い、シークエンスを行っている。データは整理され次第学会で報告し、論文にもする。概ね順調である。 ベトナム以外でも、ミャンマーのイエジン獣医大学、タイの大学、マレーシアのプトラ大学でも打合せを行っている。 現在、死亡率の高いアフリカ豚コレラ(ASF)が中国からベトナムへ広がりメコンデルタまで見られるようになってきた。それに伴って農場へ入っての材料採取に制限がかかる可能性があるので状況を見守る必要がある。ASFは豚に大損害を与える危険な重要疾病であるが蔓延防止のため材料入手の困難、又は不可能であることが予想され、現在病理学的解析の予定はしていない。
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今後の研究の推進方策 |
東南アジアにおける日本の脅威となる豚の越境感染症のうち、豚コレラについて病理学的調査を実施した。これまで日本に越境感染症としてもっとも危惧される感染症であり、現在、日本でも侵入経路は不明確であるが新しく発生して養豚界では大きな問題となっている。しかし、病態の詳細はわからずに殺処分のみが実施されている。東南アジアのうち、ベトナムについて病理学的調査をすすめた。さらに遺伝子検査をすすめ系統樹解析を行う。今後は、他の国ミャンマーについての豚コレラ発生について、病理学的調査研究を進める。 また、ベトナムにおいては、豚下痢症(PED)の発生は常時本ウイルスが存在し治まらない。日本では、治まったり、ぶり返したりしているが、日本での調査も加えて、解析した上でベトナムでの調査を始める。特に注目すべきは、ベトナムでは多様なPEDウイルス株が存在し、日本の状況とは異なり問題が大きい。治まる気配は全くなく、越境感染症の原因となる。日本では、従来と感染部位には変化が出てきているとされているが(パーソナルコミュニケーション)、ベトナムでも、小腸、大腸、肺のウイルス局在が従来のものと同じかを調査する。 さらに、免疫組織化学的染色に使用するモノクローナル抗体作成のためにベトナムで、組換え抗原作成を行い、その後のマウスに接種する過程に備える。この抗体では最初に豚コレラについての抗体を作成し、成功することによって、次に口蹄疫について抗体を作成する。
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