研究課題/領域番号 |
17H04641
|
研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
八田 岳士 北里大学, 医学部, 講師 (00455304)
|
研究分担者 |
白藤 梨可 帯広畜産大学, 原虫病研究センター, 助教 (00549909)
中尾 亮 北海道大学, 獣医学研究院, 准教授 (50633955)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | cell-based assay / R. decoloratus / 殺ダニ剤抵抗性 / octopamine receptor / ケニア / ウガンダ / ガーナ |
研究実績の概要 |
アフリカ地域の畜産経済振興において最大の障害は感染症による家畜の損耗である。とりわけマダニ媒介感染症による飼養家畜の集団感染ならびに斃死は、経済的損失を引き起し、飼養家畜の体表上で吸血により日々大きくなるマダニを、苦々しく手ずから抜去している畜主にとっては、精神的徒労感が最も大きい重大な事故の一つである。本研究は、アフリカ中東部において顕在し、アフリカ西部ではその出現が懸念されている殺ダニ剤抵抗性マダニの抜本的対策技術の確立を企図し、以てマダニ媒介感染症による家畜の集団事故の予防対策に資することを目的とし、ケニア・ウガンダ両国を対象とした殺ダニ剤抵抗性マダニの分布調査を行う。また、既存の薬剤感受性試験に替わる簡便な検査技術開発の方向性を明らかにするため、(1)抵抗性形質獲得メカニズムの分子生物学的解析を行い、(2)迅速診断法の開発と現地調査への試行・応用を目指すものである。 本年度の研究では、ケニアにおいて採取したホルムアミジン系殺ダニ剤アミトラズ抵抗性のマダニより得た標的分子をコードする遺伝子β-adrenargic-like octopamine receptor (βAOR)について、前年度成果をもとに、cell-based assayを構築して細胞生物学的に、SNPの存在が及ぼすβAORの分子活性の違いについて解析を行った。 対照区には、参照株由来の野生型βAOR(wβAOR)遺伝子配列ORFを組み込み、HEK293細胞へトランスフェクションにより導入した。実験区には変異型SNPを有するβAOR(mβAOR)遺伝子配列ORFを組み込み、同様に細胞へ導入した。アゴニストであるオクトパミンにて賦活化したところ、mβAOR導入細胞にて、細胞内cAMP濃度が対照区より高いという結果を得た。少なくともmAORはアゴニストに対する感受性が上昇していることが示唆される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は段階的に研究を遂行し、ケニアやウガンダ国にて採取したマダニについて、(有機リン系、合成ピレスロイド、ホルムアミジン系)殺ダニ剤抵抗性の分布調査、抵抗性形質獲得メカニズムの分子生物学的解析、迅速診断法の開発と現地調査への試行・応用を目指すものである。初年度の成果として、ケニアにおいて採取したホルムアミジン系殺ダニ剤アミトラズ抵抗性のマダニより得た標的分子をコードする遺伝子β-adrenargic-like octopamine receptor (βAOR)について、そのRNA情報、ゲノムにおける遺伝子構造、SNP情報と採取地域ごとの分布率について纏めた成果を投稿する段階となった。また、有機リン系殺ダニ剤標的分子であるAChEについても全長配列の解読に成功している。次に本年度の成果として、培養細胞系を用いたcell-based assayから、βAORのSNPの違いによる受容体活性の変化があると示唆される結果を得た。また、本年度は殺ダニ剤抵抗性マダニの出現が懸念されている西アフリカのガーナ国についても訪問する機会を得ることができ、現地マダニの調査を進める方向で覚書を交わすこととなった。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度では、cell-based assayにより解析を進めているβ-adrenargic-like octopamine receptor (βAOR)について、得られたSNP情報から責任SNPを解明するためのβAOR薬理生理学的解析について、各種アゴニストやアンタゴニスト、さらには殺ダニ剤アミトラズやアミトラズ代謝物などを用いて、解析を進める。候補SNPについては、検出可能な迅速遺伝子診断法であるLAMP法を基軸として、さらに簡便な等温核酸増幅法による識別手段の開発を行う予定である。
|