研究課題
アフリカ地域の畜産経済振興において最大の障害は感染症による家畜の損耗である。とりわけマダニ媒介感染症による飼養家畜の集団感染ならびに斃死は、経済的損失を引き起し、飼養家畜の体表上で吸血により日々大きくなるマダニを、苦々しく手ずから抜去している畜主にとっては、精神的徒労感が最も大きい重大な事故の一つである。本研究は、アフリカにおいて顕在している殺ダニ剤抵抗性マダニの抜本的対策技術の確立を企図し、以てマダニ媒介感染症による家畜の集団事故の予防対策に資することを目的とし、殺ダニ剤抵抗性マダニの分布調査と迅速診断法の開発を目指すものである。最終年度の研究では、これまでに採集したケニアの農業畜産が盛んな地域に位置する野外農場にて、牛体表上で半飽血状態のウシマダニ亜属Rhipicephalus Boophilus decoloratusの成ダニ(全虫体)由来ホルムアミジン系殺ダニ剤アミトラズ抵抗性のマダニより得た標的分子をコードする遺伝子β-adrenargic-like octopamine receptor (βAOR)について、さらにSNP検出をこころみた。参照マダニ株由来の野生型βAOR遺伝子配列ORFと抵抗性系統由来のβAOR遺伝子配列ORFを比較したところ、これまで少なくとも3か所以上のSNPが存在していた。第2膜貫通領域にあるSNPについて、さらにPCR-RFLPを応用したLAMP-RFLPによる検出・識別方法の開発に成功した。本手法を用い実際に西アフリカの農場にて採取されたマダニで予備試験を行ったところ、これまでは薬剤投与による生死判定よってのみ診断していた一月以上の時間を要する抵抗性判別方法と比較し、約5~7日で判定が行えた。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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