研究課題/領域番号 |
17H04642
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
白戸 憲也 国立感染症研究所, ウイルス第三部, 主任研究官 (40415477)
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研究分担者 |
泉對 博 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (10355167)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | MERS / MERSコロナウイルス / ヒトコブラクダ / エチオピア |
研究実績の概要 |
平成29年度はエチオピアに疫学調査に赴き、ヒトコブラクダからの鼻水検体採取を行った。現地のDr. Simenew KesKes Melaku博士に協力を依頼し、Afar地方において10日間の日程で検体採取を行った。口蹄疫の問題があり、ラクダの生体試料はそのままでは日本国内に持ち込めないため、FTAカードを用いて検体採取を行い、可能な限り現地でRNA回収を行った。Awash、Amibara、Gewane、Semeraの4か所で合計258検体の採取に成功した。開発中の蛍光消光RT-LAMPを用いて検出を行い、35検体がMERS-CoV陽性となった。2種類のRT-LAMPプライマーセットのうち片方で陽性となったものについて、リアルタイムRT-PCRでの追加検査を行ったところ、さらに4件が陽性となり、合計39検体(全体の15.1%)が陽性となった。陽性となった検体のうち、検出時間からウイルス力価が高いと想定されるもの12を用いてMiSeqによる配列解析を試みた。うち2検体で多くの断片配列が確認されたため、HiSeq X Tenシステムを用いてさらなる解析を行い、全長遺伝子配列の解読に成功した。解読した配列のうち、ウイルス感染に関与するスパイク(S)タンパク質、およびMERS-CoVアフリカ株は特徴的な配列を持つと報告されているORF4aについて、ウイルスリカバリー用のBACベクターへの組み換えの際のテンプレートを用意するため、人工遺伝子合成により配列を合成した。今後はこれらを用いて組み換えウイルスの作製を行い、感染性の違い等を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通りにエチオピアに疫学調査に赴き、ヒトコブラクダからの鼻水検体を採取し、MERS-CoV陽性検体を手に入れることができた。陽性検体から無事に全長遺伝子配列の解読にも成功している。
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今後の研究の推進方策 |
合成したテンプレートを用いて、BACベクターの挿入されているEMC株と、まずSタンパク質のみを入れ替え、エチオピア株のSタンパク質がもつウイルス感染性の特徴を明らかにする。Vero細胞およびVero/TMPRSS2細胞を用いてウイルス侵入、ウイルス複製を測定し、各種プロテアーゼインヒビターを用いて細胞侵入経路に違いがあるか否かを探る。もし違いがあるようならば、中近東流行株で特徴的にみられるQ833RおよびQ1020Rの変異をエチオピア株のSに導入し、感染性に与える影響を調べる。またORF4aについても入れ替えを検討し、過去に報告にあるようにウイルスの特にIFN応答への影響やIFN感受性に変化があるか否か検討する。
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