本研究代表者はこれまで、インドネシアの熱帯サンゴ礁海域において海洋資源を中心とする天然資源の調査研究を行ってきた。そして、研究室において、採集した海洋生物・微生物・植物の抽出物を用いて各種生物活性試験を行い、多くの新規生物活性物質を発見することに成功した。そこで本研究では、インドネシアとは気候の異なるタイでの薬用資源の調査研究を計画した。海洋生物や植物の組織中に共生・共存する微生物は、特異な生物活性を示す二次代謝産物を生成していることが多い。そのような生物活性物質は、医薬品シーズの有力な候補となる。そして医薬シーズが植物や海洋生物の場合、シーズを供給するためには植物の採集・栽培あるいは海洋生物の採集を行う必要がある。しかし、資源が微生物であれば、必要な時に必要な量を培養により供給できる利点がある。本研究ではタイにおいて薬用資源の調査研究を行なった。そして、300種の植物内生菌を単離し、医薬シーズ探索のための各種スクリーニングを行い、活性物質の精製と構造決定を目指している。これまでスクリーニングにより、細胞内にタンパク質を蓄積させる作用を示すサンプル(1サンプル)、破骨細胞の分化抑制作用を示すサンプル(2サンプル)、細胞毒性・抗真菌活性を示すサンプル(1サンプル)、および、LCMS分析でデータベース未記載化合物の存在を示唆するサンプル(3サンプル)を見出した。現在、目的の化合物を精製し、構造決定を行なっている。
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