研究課題/領域番号 |
17H04651
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
山崎 伸二 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (70221653)
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研究分担者 |
日根野谷 淳 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (20548490)
飯島 義雄 神戸市環境保健研究所, その他部局等, 所長 (60144739)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | eae遺伝子 / 下痢原性大腸菌 / aEPEC / tEPEC / E. albertii |
研究実績の概要 |
2018年にケニアで収集した下痢症患者便18検体と鶏糞便45検体について8種類の下痢原性大腸菌の病原遺伝子についてリアルタイムPCRと通常のPCR法で調べた。リアルタイムPCRの結果、患者検体ではeae遺伝子が5検体で(28%)、elt遺伝子が1検体で(5.6%)、estp遺伝子が1検体で(5.6%)、aggR遺伝子が4検体で(22%)、ipaH遺伝子が2検体で(11%)陽性であった。鶏検体では、eae遺伝子が15検体で(33%)、elt遺伝子が5検体で(11%)、aggR遺伝子が7検体で(16%)、stx1遺伝子が4検体で(8.9%)、stx2遺伝子が3検体で(6.7%)陽性であった。通常のPCRの結果は、患者検体ではeae遺伝子が6検体(33%)、elt遺伝子が1検体(5.6%)で陽性であった。鶏検体では、eae遺伝子が11検体で(24%)、cdt遺伝子が2検体で(44%)、elt遺伝子が8検体で(18%)陽性であった。一方、昨年ケニアの下痢症患者便で下痢原性大腸菌遺伝子が陽性となった検体からeae遺伝子陽性菌2株分離した。また、elt遺伝子陽性菌1株分離した。昨年度調べたタイの食肉及び野菜検体に着いて通常のPCRの結果は、鶏肉23検体中、11検体(48%)でeae遺伝子が、3検体(13%)でEacdt遺伝子が陽性となった。豚肉28検体中、9検体(32%)でeae遺伝子が、6検体(21%)でstx遺伝子が、7検体(25%)でEacdt遺伝子が陽性となった。牛肉19検体中、9検体(47%)でeae遺伝子が、1検体(5.3%)でstx遺伝子が、6検体(32%)でEacdt遺伝子が陽性となった。様々な野菜60検体について通常のPCRで調べた結果、バジル、白菜、オオバコエンドロ、サラダレタスでそれぞれ1検体、きゅうりで2検体eae遺伝子が陽性となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ケニア及びタイの患者検体は、当初の予定より少なくなってしまったが、次年度増やせるよう努力したい。また、食肉を家畜検体も当初の予定より少なくなっているが、こちらも次年度増やせるよう努力したい。研究の進捗状況に関しては、eae遺伝子陽性大腸菌は、予想以上に食品を汚染していること、また、タイの食肉検体においては、Escherichia albertiに特異的なEacdt遺伝子も検出された。しかしながら、分離菌ではないがクルード検体で非定型腸管病原性大腸菌(tEPEC)の病原因子であるbfp遺伝子は検出されなかった。このことは、タイやケニアではeae遺伝子陽性の大腸菌のほとんどはtEPECでなく、定型腸管病原性大腸菌(aEPEC)である可能性が示唆された。また、タイではE. albertiiが存在している可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
今後、ケニアにおいては食肉を含む家畜検体、タイにおいては患者検体及び食肉検体についての解析を行なうと同時に、既にPCRで陽性となった検体について菌の分離を進めて行く。さらに分離菌の、菌種の同定、病原因子プロファイリング、O-genotype、薬剤感受性試験や遺伝子型の解析等を進めて行く。特に、eae遺伝子陽性菌が非定型腸管病原性大腸菌(tEPEC)であるのか定型腸管病原性大腸菌(aEPEC)であるのか、Escherichia albertiiが実際に分離できタイにおいて人の下痢症の原因になっているのか、また、stx2遺伝子を保持したE. albertiiが存在すのかどうかについて調べて行く予定である。
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