研究課題/領域番号 |
17H04654
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研究機関 | 鈴鹿医療科学大学 |
研究代表者 |
馬 寧 鈴鹿医療科学大学, 医療科学研究科, 教授 (30263015)
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研究分担者 |
川西 正祐 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 教授 (10025637)
村田 真理子 三重大学, 医学系研究科, 教授 (10171141)
大西 志保 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 助教 (80511914)
栃谷 史郎 鈴鹿医療科学大学, 保健衛生学部, 准教授 (90418591)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 肝吸虫 / 炎症関連発がん / 胆管癌 / DNA損傷 / HMGB1 / SOX9 / CD44v9 / 感染症 |
研究実績の概要 |
肝吸虫感染は胆管癌の重要なリスク要因である。タイ肝吸虫感染関連胆管癌33例患者、散発性胆管癌98例患者、正常肝臓21例の病理組織において、がん幹細胞マーカーCD44v9を免疫組織染色法により検出した。CD44v9は正常胆管細胞では染色性を示さなかったが、胆管癌組織においては散発性胆管癌、タイ肝吸虫感染胆管癌ともに陽性であった。タイ肝吸虫感染胆管癌においては散発性に比べ有意に高いCD44v9陽性率であった。より強い炎症が幹細胞を誘導する可能性が示された(Mediators of Inflammation. 2018)。 中国西江流域肝吸虫(CS)感染関連胆管癌16例患者の病理組織において、CD44v9、SOX9および炎症誘発性サイトカインHMGB1を免疫組織染色法により検出した。CD44v9は胆管癌組織においてはCS肝吸虫感染胆管癌は散発性胆管癌に比べ有意に高いCD44v9陽性率であった。SOX9、HMGB1はCS感染関連胆管癌細胞では強い染色性であった。CS感染により強い炎症が幹細胞および炎症性サイトカインを誘導する可能性が示された。また、CS関連胆管癌細胞ではより強い8-ニトログアニンの陽性発現であった。慢性的な酸化・ニトロ化ストレスが胆管細胞のDNA損傷を起こし、幹細胞における遺伝子損傷が発がんの分子機構の一端を担うことが示唆された。 CS感染ラットモデルの作製に成功し、肝臓において感染させた各時期にCSの寄生を確認した。HMGB1、CK19、SOX9などの発現を解析している。SOX9、HMGB1はラット肝臓において、CS感染後45日から異常に増生した胆管上皮細胞に強い発現が確認された。肝吸虫感染による胆管細胞は、幹細胞マーカーであるCD44v9、CK19、およびDNA損傷塩基である8-oxodGと8-ニトログアニンの局在が一致していることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
タイ肝吸虫感染Opisthorchis viverrini関連胆管癌での新規バイオマーカーCD44v9発現と強い炎症が肝細胞を誘導する可能性を明らかにし、国際学術雑誌に発表した。また、Clonorchis sinensis感染関連胆管癌においてSOX9、CK19、HMGB1が発現異常を惹起し、がん幹細胞に寄与する可能性を示した。炎症関連発がんにおける炎症と幹細胞の関与を示す結果を得ており、研究はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
1. Clonorchis sinensisとOpisthorchis viverriniが炎症関連における幹細胞異常・がん幹細胞の発現の役割解明と予防法を検討する。
2. Clonorchis sinensisとOpisthorchis viverrini感染関連胆管癌における早期発見のバイオマーカー候補を探索する。
3. Opisthorchis viverrini感染関連胆管癌細胞株を用いて、幹細胞マーカー陽性細胞と炎症特異的DNA損傷、S100P、SOX9、HMGB1の関連性について検討する。
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