研究実績の概要 |
肝吸虫関連寄生虫感染症は世界中で数万人が罹患しており、特に川魚の生食の習慣があるタイ東北部と中国の紅水河流域は、肝吸虫の感染率が極めて高く、肝内胆管癌の多発地域である。令和元年度は、インフォームドコンセントを得て、中国で肝吸虫関連肝内胆管細胞癌患者から手術検体32例を採集した。CS肝吸虫関連胆管癌の病理組織サンプルにおいて、有意に差があるがん幹細胞バイオマーカーを確認し、特にCD44v9, SOX9, HMGB1, YAP1の免疫化学染色はCS感染関連胆管癌細胞に強い染色陽性であった。また、胆管癌細胞は8-ニトログアニンの強い陽性発現が確認され、大部分の胆管癌細胞に特異的に生成された。8-ニトログアニンは病変部位に特異的に生成され、その強さは前癌状態からがんの発生・進展に至る過程を反映するという極めて意義深い知見を得た。 CS感染ラットモデルの肝臓において感染後45日から、CK19陽性発現胆管細胞は増え、また、感染後90日から異常に増殖した胆管上皮細胞にEPCAM, SOX9, HMGB1の強い発現が観察された。RT-qPCRの検出では、炎症因子であるCOX-2, IL-6, IL-10はコントロール群と比べ有意に高いことが確認された。 正常な胆管細胞(MMNK1)およびCCA細胞を用いて、CD44v9および関連分子の発現レベルを、RT-qPCRおよび免疫細胞化学染色を通じて定量した。生体内腫瘍の増殖をヌードマウス異種移植片により評価し、免疫組織細胞化学染色を用いて組織学的および分子変化を解析した。CD44v9サイレンシングは、アポトーシスおよび細胞周期停止の誘導によるCCA細胞増殖を抑制した。免疫組織化学分析は、コラーゲン沈着による結合組織の増加やCD44v9サイレンシングによるヒアルロン酸合成の減少など、異種移植片組織の組織学的変化を確認した(論文投稿中)。
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