研究課題/領域番号 |
17H04664
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
小林 宣道 札幌医科大学, 医学部, 教授 (80186759)
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研究分担者 |
鷲見 紋子 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (10363699)
アウン メイジソウ 札幌医科大学, 医学部, 助教 (10749584)
川口谷 充代 札幌医科大学, 医学部, 助教 (70733062)
漆原 範子 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (80396308)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 薬剤耐性菌 / 分子疫学 / 開発途上国 / メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 / カルバペネム耐性腸内細菌 |
研究実績の概要 |
本研究は開発途上国のなかでも薬剤耐性菌に関する情報が特に少ないミャンマー、バングラデシュ、キューバ等のアジア・カリブ地域を対象とし、新興薬剤耐性菌の包括的な分子疫学的解析を行うことを目的とする。今年度は研究の最初の年度として、各国の共同研究者との打ち合わせを行い、研究計画の確認と対象細菌株の収集・保管、保存菌株の分子疫学的解析を行った。ミャンマーではすでに菌株の収集が進められていた大腸菌臨床分離株、健康成人由来の黄色ブドウ球菌について解析した。大腸菌は426株中ESBL産生株は37%であり、その多くがCTX-M-15であった。カルバペネム耐性は8.2%に見られ、その耐性酵素遺伝子としてNDM-1、NDM-4、NDM-5、NDM-7、OXA-181遺伝子が同定され、そのうちNDM-5が最も多く見つかった。健康成人(食品取扱者)の鼻腔、手指に由来する黄色ブドウ球菌にMRSAはなかったが、Panton Valentine leucocidin (PVL) 遺伝子が12%の菌株で陽性、TSST-1が5株で検出されたほか、すべての株がいずれか一つ以上のエンテロトキシン遺伝子を保有することが判明した。バングラデシュではマイメンシン医科大学附属病院で分離された大腸菌、肺炎桿菌、黄色ブドウ球菌の収集が順調に進み、解析が開始された。キューバでは大腸菌、アシネトバクターの収集と解析が進められている。またキューバで初めてVanA型バンコマイシン耐性腸球菌が検出された2011、2012年の菌株を再培養して解析したところ、それらが東ヨーロッパや南米の菌株に遺伝学的に近いことがわかり、外国からの伝播によりもたらされたことが示唆された。なお当初計画していたセントクリストファー・ネイビス、ラオスとの共同研究は、共同研究者側の都合で、今年度の開始は難しいことがわかり、今後あらためて検討することとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
共同研究先のバングラデシュにおいては大腸菌、肺炎桿菌、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の臨床分離株の収集保管が概ね終了し、分子疫学的解析が進められている。ミャンマーでは大腸菌の収集と解析が終了し論文投稿に至った。またMRSA臨床分離株の収集と解析が行われている。キューバではバンコマイシン耐性腸球菌に関する分子疫学的解析を行ったほか、大腸菌臨床分離株の収集が行われており、解析も一部終了済みである。
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今後の研究の推進方策 |
バングラデシュでは大腸菌、肺炎桿菌、黄色ブドウ球菌に関する解析結果を論文としてまとめ、さらに腸球菌、アシネトバクターの収集を進める。ミャンマーでは、すでに収集を進めている黄色ブドウ球菌(MRSAを含む)のほか、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、アシネトバクターも研究対象として臨床分離株の保管を行い、一部については分子疫学的解析を開始する。キューバにおける大腸菌臨床分離株に関する解析を年度内に行い、論文作成を目標とする。以上に加え中国の武漢市CDCからも細菌の薬剤耐性に関する共同研究を行いたいとの申し入れがあったため、その実施について検討を行う。
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