研究課題/領域番号 |
17H04666
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
小林 一三 杏林大学, 医学部, 非常勤講師 (30126057)
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研究分担者 |
神谷 茂 杏林大学, 医学部, 教授 (10177587)
矢原 耕史 国立感染症研究所, 薬剤耐性研究センター, 主任研究官 (70542356)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | メチローム / 胃がん / ピロリ菌 / GWAS / エピゲノム / ゲノム / Pacbio |
研究実績の概要 |
<1. 研究体制作り> 次の国の研究者と会い、共同研究体制を作り上げた。スウェーデン、ラトビア、リトアニア、ポーランド、ドイツ、デンマーク、イギリス、フランス、ポルトガル、イタリア、グルジア。アメリカ、メキシコ、ドミニカ、グアテマラ、コロンビア、ブラジル、アルゼンチン。中国、インド、パキスタン、オーストラリア、ニュージーランド。NIHとはPacbioデータの交換も始めた。菌株コレクションは杏林大学医学部に移設した。 <2. ゲノム・メチローム解析>2-1.中国株のゲノムについて、GWASの基礎となる系統解析を行い3系統を区別できた。 2-2. GWASにメチル化を取り入れるために、メチローム解析を行い、日本株73件、中国株23件、インド株3件のメチロームを新たに示し、メチル化モチーフを明らかにした。2-3. 家族メンバーからのピロリ菌についてメチロームを比較し、DNAメチル化酵素の再編によってメチロームが変化した場合を発見した。これは、メチロームの比較の前提となるメチロームの可塑性の程度を把握する上で重要である。 <3. GWASへの方法開発>3-1. 日本人の胃がん由来20株と十二指腸潰瘍由来24株のPacBio ゲノムデータを、東アジアの他国の胃がん十二指腸潰瘍株のデータと統合し、胃がんとの関連の強い遺伝多型を検出する準備を進めた。3-2. GWASにDNAメチル化を取り入れるために、ATGCの4塩基でなくメチル化を考えた10塩基でメチロームを表記する方法を開発した。 3-3. Pacbio 本社と協力して 多数の菌株を同じセルで解読するマルチプレックス法を開発した。Sequelマシンではセルあたり16株となった。3-4. 病態分類は世界で多様であり、厳しい分類基準は無くした。患者についての生活情報の収集も困難であることが判明したので 研究対象外とした。3-5.候補遺伝子の機能解析法を探索した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
私たちのピロリ菌多数株Pacbio解読は、世界に先駆けるものであったが、それらを十分に解析するための道具立てが未発達であった。この間、他の細菌のPacbio解読が進み、DNAメチル化モチーフ配列とDNAメチル化酵素(その標的認識ドメイン)を対応づけることが、より容易になった。さらに「10塩基記述」という新しいアプローチにも見通しがついたので、今後の急速な展開が期待できる。 研究代表者は、当該年度は準備期として、ヨーロッパなど外国での情報集中に注力した。このためNIH のHpGPグループとの連携も進展した。HpGP側ではこれまで100株程度のメチロームデータを蓄積したが、まだメンバーにも未公開である。私たちとはデータの交換を開始した。彼らに、私たちの持つピロリ菌のゲノム科学メチローム科学のノウハウを伝えることを始めている。第2年度からは、急速なデータ蓄積・データ解析の進展及び、一体化した国際的努力によるプロジェクトの大きな進展を期待している。
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今後の研究の推進方策 |
1. 現在のデータでGWASを試みる。できれば、HpGPのデータも入れる。 2. メチル化を考えた10塩基でメチロームを表記する方法を発展させ、GWASに適用しEWAS法を開発する。 3. 日本・沖縄・中国を含めた東アジア株の系統進化を明らかにする。インド株の系統進化を明らかにする。これは、GWAS に必要な情報を与える。 4. これまでのPacbioデータについて、DNAメチル化モチーフをDNAメチル化酵素の標的認識ドメインと対応づける。これから、ミクロ進化による可塑性の程度を見極める。同じ目的で、一つのミクロ環境からのメチロームの多様性を明らかにする。これらはEWASの結果の解釈に重要である。
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