研究課題/領域番号 |
17H04667
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
坪井 直毅 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (50566958)
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研究分担者 |
湯澤 由紀夫 藤田保健衛生大学, 医学部, 教授 (00191479)
丸山 彰一 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (10362253)
林 宏樹 藤田保健衛生大学, 医学部, 講師 (10378086)
勝野 敬之 愛知医科大学, 医学部, 講師 (60642337)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ループス腎炎 / バイオマーカー / CD11b / Fcg受容体 / CD163 / 疾患活動性 / 組織分類 |
研究実績の概要 |
難病全身性エリテマトーデスに合併するループス腎炎(LN)の診断には組織学的評価が必須であるが、医療水準の低さから腎生検が行われない国々も数多く存在する。申請者は、国内患者サンプルを用い腎生検の代用となる『3種の糸球体腎炎特異的なバイオマーカー候補分子』を見出した。これらを国際標準のLN診断法へ高めるためには、疾患発症に影響を与える人種、環境因子など疫学的背景、診療実態調査を含めた国際的でかつ大規模な調査研究を行う必要がある。 本研究では、申請者が同定したLNバイオマーカーを疫学的背景の異なる諸外国患者集団で比較検討し、各国におけるプラクティスパターンの中での有用性を評価することを目的とする。本研究は、申請者が同定したFcγRIIIB、CD11b、sCD163のLNバイオマーカーを、疫学的背景の異なる諸外国患者集団で比較検討し、各国におけるプラクティスパターンの中での有用性を評価することを目的とする。 H29年度は研究課題①国内・海外ループス腎炎患者尿、血液中のsFcγRIIIB、CD11b、sCD163測定、②尿、血液中sFcγRIIIB、CD11b、sCD163と腎疾患病理組織学的活動性との相関評価を国内サンプルで遂行した。Nagoya Kidney Disease Registry (N-KDR)登録272症例(うちLN118症例)の生体試料を用いて、尿および血漿中のFcγRIIIB、CD11b濃度をELISAで測定し、各々尿中クレアチニン濃度で標準化した。尿中FcγRIIIB、CD11bは増殖型LN患者において有意に上昇を示したが、CD11bのみが糸球体CD11b陽性白血球および組織学的疾患活動性と相関を示した。加えて尿中CD163, MCP-1の計測も進行中である。また本国際共同研究計画は名古屋大学医学部倫理委員会で承認された。またMexico City、ShanghaiのSLE研究施設で共同研究の話し合いをもち、両施設で現在倫理審査中である。またKuala Lumpur、LausanneのSLE研究施設にも計画提案を行なった。今後も引き続き研究体制構築を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Nagoya Kidney Disease Registry (N-KDR)登録272症例(うちLN118症例)の生体試料を用い、尿および血漿中のFcγRIIIB、CD11b濃度測定は終了した。代表的腎糸球体疾患の中で、LN、ANCA関連疾患において両分子の上昇を確認し、さらにLNにおいては有意上昇を示す組織型を同定している。また、腎糸球体免疫染色によるCD11b、エステラーゼ、CD163陽性細胞数との相関解析を行っており、上記2分子がLN腎糸球体における好中球、マクロファージ浸潤を反映するか検討している。さらには現在進行中の尿中CD163、MCP-1濃度測定結果を合わせ、各バイオマーカーのROCカーブを検討することにより、4因子の増殖型LN診断予測に関する特異性、感受性比較が可能となる。また懸念された倫理審査面においては、代表者所属施設で研究計画承認、Mexico City (主任研究者Florencia Rossetti, INCMNSZ)、Shanghai (教授Ding Xiaoqiang, Fudan University)において現在倫理審査中である。また計画提案は他にマレーシア(Kuala Lumpur, 主任研究者Rosnawati Yahya, Hospital Kuala Lumpur)、スイス連邦(Lausanne, Dr. Denis Comte, CHUV, スイスSLEコホートに計画提案中)に対しても行った。
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今後の研究の推進方策 |
本研究計画で提案した尿中FcγRIIIB、CD11b、CD163の3分子と組織学的所見との相関解析に加えて、各症例の臨床情報を収集し、バイオマーカー採取時の腎機能、蛋白尿、血清補体価との関連も検討し、LNバイオマーカーとしての意義をさらに深化させる。国内サンプルでの検討結果は査読学術誌に投稿することで、さらに本研究を国際的にプロモートしていく。国際共同研究面では、現在研究計画申請~承認過程にある施設でのLN生体サンプル収集、バイオマーカー測定を実行していく。またアメリカ腎臓学会やヨーロッパ腎臓移植学会など国際会議の場、あるいは共同研究施設に赴き、進捗状況発表や結果についての議論を重ねる。これによりさらに参加施設数を拡大し、共同研究体制構築を強固なものに押し上げる。
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