近年Internet of Things (IoT) や機械学習・人工知能 (ML/AI) のアプリケーションを処理する組込みシステムでは、従来システム以上に小規模化・高速化・省エネルギー化の設計制約が課せられている。一方、これらのアプリケーションの多くは「計算の正確さを100%担保する必要はない」という大きな特徴を持つ。本研究は、積極的・体系的にIoT/AIアプリケーションの許容誤差を活用する、組込みシステムの新たな設計パラダイムを構築することを目指す。 前年度に引き続き、本課題で開発した近似化手法を具体的なアプリケーションに適用し、この効果を定量的に評価した。具体的には、充足可能性問題 (SAT) に対して、生物の生存アルゴリズムに基づいて導出された解探索アルゴリズム (AmoebaSAT) の内部の制御ルールに着目した。IoTのアプリケーションの多くは組み合わせ最適化問題によって解くことができ、組み合わせ最適化問題はSATに帰着することができる。本課題では、AmoebaSAT内部の中間変数の量子化(ビット精度の削減)、および、制御ルールチェックの近似化を行った。さらに、その近似化されたアルゴリズムをFPGAに実装した。これにより、既存のSATソルバに比べ、大幅に解探索速度を改善した。本研究成果は、国際会議International Conference on Field-Programmable Technology (ICFPT)にて発表した後、FPGA実装方法を改善した成果を国際論文誌IEEE Accessに採択済みである。さらに、このSATソルバを5Gネットワークルーティングに応用した事例研究の成果を、国際会議IEEE Vehicular Technology Conference (VTC)-Springにて発表済みである。
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