研究実績の概要 |
運動学習において、実際の学習後に休憩期間を置くことが運動成績の向上や運動記憶の固定化を助ける現象が多くの行動実験から示されているが、休息中の安静時脳活動が学習に及ぼす影響は不明である。そこで本研究では、安静時脳活動が運動の学習や記憶形成に果たす役割を、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて検討した。実験では、まず固視点のみを画面に呈示し、被験者の安静時の脳活動をfMRIにて計測した。次に視覚運動課題としてスクリーン上をランダムに動き回るターゲットを、ジョイスティックを使ってトラッキングする課題を用いた。その際、我々の先行研究(Ogawa & Imamizu, 2013)で用いた課題を使い、カーソルの運動と実際の手の運動方向との間に回転変化を導入することで、新規な視覚運動環境での学習を実施した。またコントロール課題として、直前に被験者本人の行った運動学習試行の視覚的なリプレイが呈示され、それを受動的に眺める試行を実施した。その実際の運動学習後に、再度安静にした状態での脳活動を計測した。その後、同じ運動課題を実施した。全ての課題はMRIスキャナの中で実施した。分析時では、まず運動学習セッションでの脳活動パターンを用いて運動学習試行とリプレイ試行との識別を試みた。次にその識別器を、学習後の安静時脳活動パターンに対して適用した結果、運動学習前と比べて運動学習試行の脳活動パターンの増加が観察された。このことは学習後の安静時においても運動学習時と同じ脳活動パターンが再現されていることを示唆する結果である。
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