本年度は物性変換理論に必要な技術として2つの測距技術を実現した。具体的には、光を時間的・空間的に変調させ、観測された陰影情報をもとに距離を計測する時空間相関イメージング技術の高精度化と、波長の異なる二波長が対象媒体内部を通過する際の光の吸収差を利用し、動きの撮影に特化したイベント駆動型カメラで撮影することで出現するイベント量が距離に相当する測距技術を実現した。前者は、測距精度は高いが測距可能なレンジが短い構造化照明法の特徴と、測距可能なレンジは長いが測距精度が比較的悪いToF法両方のメリットのみを合わせた特徴を持つ手法であり、その計測時間も従来と同程度である。本技術は、従来トレードオフであった測距精度と測距可能なレンジの限界を乗り越える新しい手法であり、これからの測距技術を牽引可能な礎を築いたものである。また後者の技術は、これまで動作解析や運動解析など主に高速に動くものの変化を正確に捉えるために用いられてきたイベント駆動型カメラを能動照明と組み合わせることで、カメラ上で陰影変化を生じさせ、距離に応じたイベント情報として抽出するイベント駆動型カメラの新しい方向性を示したものである。これらの成果はこれまで開発してきた物性情報を光の情報として捉えることが可能な基礎技術と多角的に光の情報を捉えることが可能な基礎技術という位置付けであり、物性情報を光の情報としてより正確に捉えることが可能となった。
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