令和2年度は、リアルタイム投影色補償の研究に進展があった。前年度に作成したシミュレーションベースのデータセットを用いて学習した深層CNN (Convlutional Nueral Network) を用いることで、高速性と高性能を併せ持った投影ボケ補償が実現できた。また、従来はボケ補償するために、投影面上での投影像のボケ具合を予め計測するため、ドットアレイなどの特殊なパターンを投影する必要があったが、提案した手法ではそれが不要になった。これらの成果をまとめた論文が、光学系の主要論文誌であるOptics Expressに採録された。またこの研究では静止画投影のみ対応していたが、年度後半に研究を進めた結果、動画にも対応できる深層ネットワーク構造を構築することができ、投影対象が移動していても、ボケを生じることなく動画投影できることを実験により確認した。 また、平成30年度まで研究を推進していた、投影対象を空間非一様にボケさせる技術を発展させ、実空間の任意の領域のみズーム倍率を変更するシステムを構築した。動作原理は以下の通りである。電気式焦点可変レンズを2枚重ねたものを眼鏡として採用し、そのズーム倍率を高速(60Hz)に変調する。レンズと同期した高速プロジェクタで実シーンを照明する。ズーム倍率を変えたい領域には、目的のズーム倍率になったタイミングでプロジェクタから照明する。それ以外の領域には、ズーム倍率が等倍になったときに照明する。このしくみによって、望みの領域のみ、所望のズーム倍率で観察できることを実験により確認した。
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