研究課題/領域番号 |
17H04700
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
村井 昭彦 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 主任研究員 (90637274)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 運動生成・制御メカニズム / バイオメカニクス / デジタルヒューマン / 運動力学解析 / アクシデント推定・予防 |
研究実績の概要 |
A)ヒトの運動力学特性をパラメトリックによく表現する運動表現モデルの構築: ヒトの通常運動のディープデータを計測した.実験室において光学式モーションキャプチャを用いてヒトの歩行を精緻に計測した.また同時にフォースプレートによりヒトが環境から受ける接触力を計測した.そして,デジタルヒューマン研究グループにて開発するDhaibaWorksおよびその上に構築する筋骨格モデルを用いることにより,逆運動学計算から関節角度・速度・加速度等運動学データを,逆動力学計算から関節トルクデータを得た.次に,ロボティクスやスポーツ科学で用いられるモデルを発展させ,計測させる通常運動の運動力学特性をパラメトリックによく表現する運動表現モデルを構築した.ここでは全身をバネ・マス系で表現するSLIPモデルをベースとしたモデルを構築した. B)運動制御メカニズムの同定: A)にて構築された運動表現モデルを用いて,ランニングや義足スプリントにおけるモデルパラメータの同定を行った.ここではSLIPモデルのバネ・ダンパ・マスのパラメータを同定し,義足の硬さ等実際の物性値に関係する妥当なパラメータが得られることを確認した. C)ビッグデータ計測デバイスの開発: 生成される実現困難な運動の検証のために,ウェアラブルなデバイスを開発した.研究計画時は小型の6軸力センサを内蔵しワイヤレスでデータを送信できるシューズを挙げたが,実用性や耐久性から,ウェアラブルIMUセンサを用いた運動計測システムおよびフォトリフレクタを用いた床反力計測システムを構築している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
C)において,当初計画していたウェアラブル接触力計測デバイスをさらに耐久性・実用性のあるシステムで実装するとともに,さらにウェアラブル運動計測システムを構築している.また本年度は実施を計画していなかったB)の運動表現モデルのパラメータ同定についても実施した.
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今後の研究の推進方策 |
B)運動制御システムのパラメータの同定: 平成29年度に実施したA)で計測されたディープデータを用いて,運動表現モデルのパラメータを同定する.例えば平成29年度に実装したSLIPモデルの場合は,接触力を質量中心と接触点間のバネ・ダンパ系が出力するとし,バネ・ダンパ係数を運動および接触力から二乗誤差最小等の最適化により同定した.本年度はこのモデルを一般化し,接触力+関節トルクを運動表現モデルのアクチュエータが出力するとし,アクチュエータの特性および運動制御システムを同定する.この一部については平成29年度に実現したが,さらに詳細に検証することで,パラメータの同定の過程で運動表現モデルが十分に計測される物理現象を表現できるか検証し,それにもとづき運動表現モデルをアップデートする. C)パラメータ調整や最適化による,シンプルな運動表現モデルにおける運動の変容: B)で得られる運動表現モデルや環境のパラメータの調整により,運動の変容を実現する.例えば障害物でつまづいたり床で滑ったりする場合には環境のパラメータを調整し,また筋の衰え等による転倒を考える場合には運動表現モデルのパラメータを調整し,順動力学シミュレーションを行う.一般的にヒトの運動は自由度が多く,また接触力推定は不安定になりやすく,詳細なヒトの運動を直接変容してシミュレーションを行うのは困難である.本研究ではヒトの運動力学特性をパラメトリックによく表現するシンプルな運動表現モデルを介することでこの問題を解決する.ここでは,運動表現モデルや環境のパラメータの変化と,それによる運動の変容の対応が重要となる.本年度は,複数の運動力学的に特徴的な動きをA)の手法を用いて計測したうえでB)の手法で運動表現モデルのパラメータとして表現することで,この対応を明らかにする.
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