研究課題/領域番号 |
17H04702
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
山越 康弘 昭和大学, 医学部, 兼任講師 (70743300)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 無負担型生体計測 / 遠隔・在宅医療 / 医療・福祉 / 電子カルテ |
研究実績の概要 |
本研究は、院内はもちろん、在宅下でも検査・ケアのために必要な生体情報をベットで全自動・無負担で取得し、それらの情報が電子カルテに自動入力される無負担患者モニター・電子カルテ融合システムを構築し、その有用性を検証することを目的とする開発研究である。 令和元年度は、当初研究計画書で記載した次の項目について研究開発を実施した。1)データ自動入力プログラムの開発と有効性検証(R1年度): 既存のネットワークを用いて、ベッドモニターシステムのデータが蓄積されたクラウドサーバーと、電子カルテのデータが集積されたサーバーをリンク可能なプログラムを新たに開発する。さらに、長期療養患者を対象としたモニタリングを実施し、診断や体調管理、病態解析への有効性を検証すると共に、新たな解析手法を確立する。 その結果、ベットモニターシステムのプロトタイプ(H29年度に製作)を利用し、ベットモニターシステムへの解析アルゴリズムの導入や通信方法の決定、クラウドサーバーの構築、表示・閲覧ソフトウェアの開発を行った。また、実際に複数の健常者・長期療養患者を対象に、全自動・遠隔操作でモニタリングできるベットモニターシステムの試験運用を行った。得られた計測データは診断や体調管理を検知するための新たな指標とし、脊髄損傷患者における療養支援への有効性を検証し国内外学会に発表した。 今後は、長期療養患者に加え、在宅患者も対象にした長期的なデータを取得し、システムの有用性評価と得られるデータのさらなる医学的有効性を実証して、研究成果の公表等に注力していきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は「電子カルテ内データ自動入力プログラムの開発と有効性検証」を目標に検討を行った。すなわち、 1)ベットモニターシステムの診断や体調管理解析アルゴリズムの導入や通信方法の決定、クラウドサーバーの構築、表示・閲覧ソフトウェアの開発に成功した。2)ベットモニターシステムを通して、脊髄損傷患者を対象とした約10ヶ月の継続的な計測に成功し、患者の体調変化を自動・無負担で遠隔追跡可能であることが確認された。3)電子カルテとのデータ共有は院内セキュリティー上の理由から実装できず、院内・在宅用のそれぞれのサーバーで運用することとした。4)療養患者には、生体情報をベットで全自動・無負担で取得できるこのベットモニターシステムを高く評価され、さらに、治療・回復効果を数値データで示すことによりモチベーションを上げる効果もあった。5)ベットから得られた脈拍や呼吸信号などの生体情報は周波数分析することにより新たな指標(呼吸変動性)とし、体調の悪化などを検知する数値として解析アルゴリズムに組み込んだ。6)これらに関する研究成果は、国内1件、国外2件の技術系・臨床系学会において発表を行い、さらなる発展が期待されている。 以上により、本年度の成果は、ベットモニターシステムの有効性や病態生理学的解析という観点からも大きな意義もあると考え、おおむね順調に進展しており、当初の目標を達成しつつあると考える。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究の推進方策は、基本的には1)在宅ベッドモニターシステムの有効性検証、2)血圧計測システムの試作開発、3)メカニカルストレス低下からくる骨脆弱性に対する検証、について研究開発を行う。 1)在宅ベッドモニターシステムの有効性検証:ベッドモニターシステムを用いた退院後の長期療養患者の見守りを行い、日々の健康管理に有効なデータ解析と患者へのフィードバック法の確立を図り、健康生活支援への臨床的有効性を検証する。2)血圧計測システムの試作開発:在宅でも簡便に計測できる他の生理情報計測法として、実施研究者らがこれまで開発を行ってきた血圧計測法(K.Yamakoshi et al. : Med Biol Eng Comput.1982)を用いた連続血圧計測システムの試作開発、およびスマートフォンを利用したカフレス血圧測定アプリ(K.Matsumura et al.: KBehavior Research Methods. 2013)の試作開発を行い、脈拍・呼吸変動性に加えて有効な解析指標を検討する。3)メカニカルストレス低下からくる骨脆弱性に対する検証:脊髄損傷患者の長期臥床・メカニカルストレス低下からくる「骨脆弱性」を着目し、治療効果をベットモニターシステムでモニタリングし、病態解析の指標の一つとして基礎的な知見を得る。 最後に、研究協力機関の医師・看護師の協力・連携を得て、簡便に生体情報を計測できるシステムを早期に開発を行い、フィールド試用を通してシステムの有用性評価と研究成果の公表等に注力していきたい。
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