研究課題
本研究課題は以下を目的とする。大規模生物データから微生物生態系を復元し、その機能・安定性評価や診断のための理論を構築する。微生物生態系の最適設計のための計算機科学的手法を確立する。これらの手法を実問題に応用し、微生物叢に基づく診断、評価、治療、環境浄化などの重要課題に貢献する。本年度は以下のような実績をあげた。生物間の相互作用を復元する(推定する)ために用いられる有名な手法であるMetabolic network-based reverse ecology法の有効性を再検討した。特に、病原ホスト-病原菌相互作用の推定において、この手法には限界があること示した(Takemoto & Aie, 2017)。具体的に、このような種間相互作用の推定においては、病原菌(微生物)の系統関係、ゲノム情報(ゲノムサイズや遺伝子の数)、生理(好気性)なども考慮する必要があることがわかった。微生物生態系の機能や安定性評価するための理論を、自身が構築するECOSMOS(EstimatorofCOmmuniryStrcture based on MetabOlic networkS)に実装した。例題として、糖尿病患者と健康な人の腸内細菌叢から微生物生態系を復元し、その機能や安定性の評価を行った。具体的に、糖尿病患者の微生物生態系は比較的、協力性が低く競争的であり、回復性に乏しいことを見出した。これらの結果は国際会議と国内学会(Takemoto, 2018; 竹本, 2018)で発表した。その他、開発した分析手法をタンパク質凝集解析(Uemura et al, 2018)や活性部位予測(Song et al., 2018)などに応用して研究成果をあげた。
2: おおむね順調に進展している
予定されていた理論の組み込みは終了した。データ整理は順調に進み、それらのデータを応用して、生態系や代謝についての興味深い知見を引き出すことができた。既存手法の適用限界も明らかになり、今後予定されている理論拡張に目処がついた。
次年度以降も、基本的には当初の研究実施計画通りに進める。特に、応用例を増やすためにさらにデータを充足させる。今年度の研究成果を参考にして、微生物生態系の推定手法の拡張を行う。また、微生物生態系の機能や安定性評価するための手法は学会発表にとどまっているので論文化を急ぎたい。
すべて 2018 2017 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
Journal of Theoretical Biology
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https://sites.google.com/site/kztakemoto/publication