研究課題
本研究課題は以下を目的とする。大規模生物データから微生物生態系を復元し、その機能・安定性評価や診断のための理論を構築する。微生物生態系の最適設計のための計算機科学的手法を確立する。これらの手法を実問題に応用し、微生物叢に基づく診断、評価、治療、環境浄化などの重要課題に貢献する。本年度は以下のような実績をあげた。昨年度は生態系の機能や安定性評価するための理論を手法に組み込んだ。この手法の応用例を示すために、データ整理がほぼ完了した生態ネットワークに適用した。送粉系や種子散布系のような共生系のネットワーク回復力は温暖化速度や人間活動指標と関連することを見出した(Nagaishi & Takemoto 2018)。特に、温暖化や人間活動が顕著な地域の共生系のネットワーク回復力は高いことが示された。さらに、機能や安定性評価するための理論で海洋食物網も分析した。海洋環境の全球データも使用することで、温暖化(とそれに付随する海洋環境変化)は、全体的な傾向として、小さな生物に対して顕著であることを見出した(Dobashi et al. 2018)。結果は、環境変動が食物網を不安定化させていることを示唆している。また、メタゲノムから微生物生態系の代謝機能を推定する計算システムの更新にも貢献した(Arai et al. 2018)。また、多階層ネットワーク分析手法の組み込みも着手した。応用例として、環境汚染物質とヒト疾患の関連性評価を行った(Iida & Takemoto 2018)。身近な汚染物質は思っていた以上にヒトの健康に重大なリスクをもたら可能性があることを見出した。その他、開発した分析手法を脳ネットワーク分析(Ueda et al. 2018)に応用して研究成果をあげた。
2: おおむね順調に進展している
手法開発とデータ整理は順調に進んでいる。特に、実データを利用して、研究成果を着実にあげることができている。
次年度以降も、基本的には当初の研究実施計画通りに進める。応用例を増やすためにさらにデータを充足させる。特に、ヒト腸内細菌叢の大きなデータセットを入手したので、このデータ整理を行い分析を進めたい。また、生物間の相互作用を復元する(推定する)ために用いられる別の手法である共起ネットワークアプローチとの比較も行うことで、本研究の有用性を明確にする。
すべて 2018 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 4件、 招待講演 2件) 図書 (1件) 備考 (1件)
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https://sites.google.com/site/kztakemoto/publication