研究実績の概要 |
本研究課題は以下を目的とする。大規模生物データから微生物生態系を復元し、その機能・安定性評価や診断のための理論を構築する。微生物生態系の最適設計のための計算機科学的手法を確立する。これらの手法を実問題に応用し、微生物叢に基づく診断、評価、治療、環境浄化などの重要課題に貢献する。本年度は以下のような実績をあげた。 昨年度までに行なったヒト健康関連研究のみならず環境分野でも提案手法が有効であることを示すために、昨年度までに準備した土壌細菌の全球データセットを申請者の提案手法で解析した。結果として、土壌細菌の多様性が温暖化速度によって増加することを見出した(Kanzaki & Takemoto, 2021)。これは気候変動が土壌細菌の多様性に影響することを全球規模で確認した初めての例であり、注目論文に選ばれた。また、この研究で用いた気候・環境データと地理空間データ分析技術を使って、COVID-19伝播速度における気候の役割を明らかにした(竹本&千代丸, 2020)。その他、開発したネットワーク解析手法を脳体積相関ネットワーク分析(Ueda et al. 2020)に応用して研究成果をあげた。 大規模生物データから微生物生態系を復元し、その機能・安定性評価や診断のための支援ツールであるECOSMOS(EstimatorofCOmmuniryStrcture based on MetabOlic networkS)を完成させた。ユーザビリティを向上させるための拡張を行い、計算機に慣れていない研究者でも使いやすいようにした。ECOSMOSはhttp://takemoto08.bio.kyutech.ac.jp/ecosmos-lite/で誰でも利用可能である。その有効性は前年度までに示した通りである。ECOSMOSについては京都大学生態学研究セミナーなどで一連の適用例とともに紹介した。
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