研究課題
アダプティブ・ラーニング(適応学習)は,児童生徒個々の学習進捗状況を記録しそれを分析・反映することで,学習内容を分岐させ,最適化して提示する。この進展により,学校教育法にある「基礎的・基本的な知識・技能の習得」を効果的に履行し,児童生徒一人一人の習熟度や学習上の困難さ,得意分野等,個に応じた学習が可能となると期待されている。しかし,日本の学校における学習集団は1学年あたりの人数が100名に満たず,「少ないデータでも,可視化しモデルを作り,そのモデルが他のコンテクストにも適応可能というサイクルを回すこと」を実現する手法の開発が求められている。そこで本研究では,個別学習支援システムに蓄積された学習データをもとに,少人数学習集団の中で児童生徒の学習特性を可視化するシステムの開発を開始した。本年度はWebアプリケーションとしての実装を試み,サーバ側とクライアント側の両サイドから,クライアントが指定した学習データを提供する機能を開発した。教師は児童生徒らの学習履歴をグラフ上に表示し,クラス内の全児童生徒の学習履歴を一覧表示することで,クラス全体の中で任意の児童生徒の学習特性を可視化し,分析,把握することを可能とした。なお,児童生徒の学習特性の分析では,データの分析結果から学習特性の傾向までを自動的に出力させることも考えられるが,教員養成学部生に対する指導やその学習状況などに基づく考察から,教師が児童生徒らを理解する能力を育成するためにも,あえて教師自らが学習特性を分析することとした。また,学習指導要領では,学習履歴の可視化を通じた評価も求めており,教員養成段階から学習特性を分析するための能力を育成する必要がある。そこで,主に教員養成学部生を対象とした大学生らの学習履歴および学習特性を可視化・分析し,学習状況と成績などとの関連性を明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画どおり,既存の個別学習支援システムを用いて蓄積されてきた学習履歴データをもとに,1時間の授業のなかで個々の児童生徒がどのように学習を推移させていったのかをWebアプリケーション上で可視化し,教師が児童生徒の学習特性を把握することができるようになった。海外研究機関等における先進的な学習履歴分析手法の調査が実施できなかったが,関連する国際会議等に参加し,成果報告および情報収集を行うことができた。また,すでに2018年度に海外調査を実施することを決めており,これらのことを踏まえると,ほぼ計画どおりに本研究が進行できるものと考える。
海外研究機関等における先進的な学習履歴分析手法の調査を行う。この調査結果を踏まえ,学習者の学習特性を効率的に解析するためのデータセットをより最適化することに取り組む。また,様々な地域や学校において学習データを収集・分析し,システムの精度や可用性の向上を図る。加えて,教育実習生をはじめとする教員養成学部生らに対して学習特性を可視化・分析することを行い,より幅広い対象者への有用性を明らかにするとともに,将来の教師たちがどのようにしてそれらの指導力を身につけていくべきかを考察していく。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件)
日本教育工学会研究報告集
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